ISO/IEC 27091とは
ISO/IEC 27091とは、AIシステムの開発・利用で生じるプライバシーリスクを、ライフサイクル全体で特定し、影響を評価して対処するための国際規格案です。学習データだけでなく、モデル、入力、出力、保存、再利用まで確認する手引きと捉えると分かりやすいでしょう。
現在の正式表記:ISO/IEC FDIS 27091
2026年8月5日時点では、FDISと呼ばれる最終国際規格案の段階です。ISO公式カタログでは、2026年7月13日に最終原稿が承認登録のため受領された状態と確認できます。まだ発行済みの国際規格や、取得できる認証制度ではありません。
AIは個人データの影響を広げやすい
AIでは、収集した個人データを学習に使う場面だけが問題になるわけではありません。入力内容がログに残る、モデルが学習データの特徴を推測させる、出力から個人を再識別できる、別目的へ転用されるといった経路があります。
ISO/IEC 27091案は、企画、データ収集、学習、評価、提供、監視、廃止の各段階で、誰の情報がどう扱われるかを追う考え方です。プライバシーを「データを隠す作業」だけでなく、本人への影響と権利を守る設計課題として扱う点が重要です。
27090や27701との違い
ISO/IEC 27090案はAIシステムに対するセキュリティ脅威と侵害を扱い、27091案はプライバシー保護へ焦点を当てます。情報を盗まれないことと、適法・公正に扱われ本人の権利が守られることは重なる部分があっても同じではありません。
ISO/IEC 27701は、組織全体のプライバシー情報マネジメントシステムの要求事項と手引きを示します。27091案はその代替ではなく、AIモデル、学習データ、推論時の入力・出力など、AI固有の検討を深める位置づけです。規格案への対応だけで各国の個人情報保護法へ自動的に適合するわけではありません。
データの流れを起点に評価する
導入審査では、AIの名称や提供会社だけを見るのではなく、データが入ってから消えるまでの流れを図にしておきましょう。本人、従業員、顧客、取引先など影響を受ける人を特定し、次の観点を確認します。
- 目的:何のために個人データを使い、別目的へ広げないか
- 最小化:学習や推論に本当に必要な項目だけか
- 入力と出力:利用者が秘密情報を入れる可能性や、再識別につながる出力はないか
- 保持:ログ、学習用複製、バックアップをいつ削除するか
- 権利対応:開示、訂正、削除、異議への窓口と手順があるか
提供会社には、学習への二次利用、保存地域、保持期間、再委託先、削除方法、事故通知を具体的に確認してください。設定で学習利用を停止できる場合も、契約、管理画面、APIで条件が異なることがあるため、実際の利用経路で確かめましょう。
評価結果は一度作って終わりではありません。モデル更新、新しいデータ連携、用途変更、苦情や事故の発生をきっかけに見直します。最終版の発行後は条項や表現が変わる可能性があるため、社内規程へ固定する前にISO公式カタログで最新版を確認してください。
Topic発行前でも構成の一部を確認できる
ISOのOnline Browsing Platformには、発行前の文書でも目次や一部のプレビューが公開される場合があります。27091案も構成を確認できますが、最終承認で内容が変わる可能性は残ります。企画段階の論点整理には使い、契約で条項を引用する際は発行版を再確認するという使い分けが必要です。
ISO/IEC 27091に関するよくある質問
- ISO/IEC 27091へ対応すれば個人情報保護法にも適合しますか?
- 自動的には適合しません。規格案はAIのプライバシーリスクを考える助けになりますが、適用法、利用目的、同意や通知、越境移転、本人対応は国・地域と事業ごとに確認が必要です。
- 個人情報を学習に使わなければISO/IEC 27091は不要ですか?
- 推論時の入力、会話ログ、出力、利用者識別子などに個人データが含まれる可能性があります。学習利用の有無だけで判断せず、実際のデータフローを確認してください。
- ISO/IEC 27701を導入済みなら追加対応は不要ですか?
- 27701の管理体制は土台になりますが、AIモデルからの情報推測、プロンプト、生成物、用途変更などAI固有の論点が既存評価へ含まれているかを別途点検する価値があります。