ISO/IEC 27090とは
ISO/IEC 27090とは、AIシステムに固有のセキュリティ脅威や侵害を、開発から運用終了までのライフサイクル全体で特定し、検知・軽減するための国際規格案です。従来の情報セキュリティ対策へ、AI特有の確認観点を加える手引きと捉えると分かりやすいでしょう。
現在の正式表記:ISO/IEC FDIS 27090
2026年8月5日時点では、FDISと呼ばれる最終国際規格案の段階です。ISO公式カタログでは、2026年6月23日に最終承認のための投票が始まった状態と確認できます。まだ発行済みの国際規格や、取得できる認証制度ではありません。
AI固有の攻撃を既存対策へ追加する
AIシステムも、不正アクセス、設定ミス、ソフトウェアの脆弱性といった従来型の脅威を受けます。そのうえで、学習データを意図的に汚すデータポイズニング、入力を細工して判断を誤らせる回避攻撃、モデルの情報を抜き出す攻撃、プロンプトインジェクションなど、AIならではの経路も考えなければなりません。
ISO/IEC 27090案は、これらを別々の事故として扱うだけでなく、設計、データ準備、学習、評価、提供、監視、廃止という流れに沿って確認する考え方です。AI固有の対策は、アクセス管理や脆弱性管理の代わりではなく追加層になります。
42001や23894とは役割が異なる
ISO/IEC 42001は、組織がAIを責任を持って管理するためのマネジメントシステムを扱います。ISO/IEC 23894は、AIリスクマネジメント全般の手引きです。これに対しISO/IEC 27090案は、AIシステムのセキュリティ脅威と侵害へ焦点を絞ります。
一つだけを選ぶ関係ではありません。経営層が管理方針と責任を定め、リスク評価を行い、セキュリティ担当者が具体的な攻撃経路と管理策へ落とすというように組み合わせます。AIBOMでモデルやデータ、外部サービスの構成を追えるようにすると、影響を受ける対象も探しやすくなります。
導入前のレビュー項目に落とし込む
実務では、規格案の名称をチェックリストへ書くだけでは不十分です。まず対象AIの用途、利用者、扱うデータ、外部接続、モデルの更新責任を明確にします。そのうえで、次の流れで既存対策との差分を確認します。
- 対象を定める:モデル、データ、API、運用環境、関係会社を洗い出す
- 脅威を考える:従来型とAI固有の攻撃経路を業務ごとに整理する
- 対策を割り当てる:予防、検知、復旧の担当者と証拠を決める
- 変化を追う:モデル更新、データ変更、事故兆候を継続監視する
委託先には「対応していますか」ではなく、対象範囲、試験方法、監視方法、事故時の連絡証跡を確認しましょう。AI-SPMのような継続監視の考え方も、契約時の確認を運用へつなげる助けになります。
最終版の発行時には、題名、条項、移行の扱いが変わる可能性があります。社内規程や契約へ固定する前に、ISO公式カタログで最新版と発行段階を再確認してください。
Topic規格番号だけでは発行済みか分からない
ISOの公式カタログは、文書名の前につくFDISという表記と開発段階コードで進捗を示します。27090という番号が決まっていても、2026年8月5日時点では最終承認中です。調達仕様へ引用するときは、番号だけでなく版と発行段階も記録すると取り違えを防げます。
ISO/IEC 27090に関するよくある質問
- ISO/IEC 27090の認証を取得できますか?
- 2026年8月5日時点では最終国際規格案であり、ISO公式情報から27090単独の認証制度は確認できません。認証の可否をうたうサービスは、対象規格、認定機関、証明書の範囲を個別に確認してください。
- 生成AI以外のAIシステムも対象になりますか?
- 公式の対象は生成AIに限定されていません。予測、画像認識、推薦などを含め、自社が開発または利用するAIの用途と攻撃経路に応じて適用範囲を決めます。
- 契約書にはISO/IEC 27090準拠とだけ書けば十分ですか?
- 規格案への言及だけでは、委託先が何を実施するか確定しません。対象システム、試験、ログ、更新通知、事故報告、再委託先の責任を契約や別紙で具体化する必要があります。