DENDRALとは

DENDRALとは、1965年にスタンフォード大学で開発が始まった、未知の有機化合物の構造を推定するエキスパートシステムです。化学者が「この物質は何でできているか」を突き止める作業を、コンピュータに肩代わりさせる試みでした。一般に世界初のエキスパートシステムとされ、AIの歴史で重要な位置を占めています。

化学者の推理を機械に移した仕組み

DENDRALが扱ったのは、質量分析という測定で得られるデータです。物質を細かく砕いて重さの分布を調べると、その断片から「元の分子がどんな形か」を推理できます。DENDRALはこの推理を、あり得る構造を片端から組み立て、データに合うものだけを残すという手順で自動化しました。膨大な候補を化学の知識でふるいにかけ、人間が確かめられる数まで絞り込む。ベテラン化学者が頭の中で行う作業を、ひとつひとつのルールとして書き出した点が新しさでした。

「知識を詰め込む」というAIの転換点

DENDRALが示した教訓は、その後のAI研究の流れを変えました。同じ頃に注目された「General Problem Solver」がどんな問題でも解ける万能の推論を目指したのに対し、DENDRALは特定分野の専門知識をたっぷり詰め込むほど賢くなると証明してみせたのです。この発見は知識工学と呼ばれる考え方を生み、血液感染症を診断するMYCINなど、1970年代以降のエキスパートシステムへとつながっていきました。なお1965年といえば、ChatGPTの一般公開(2022年11月30日)より半世紀以上前。AIで専門家の判断を再現する挑戦は、思いのほか古くから続いてきたのではないでしょうか。

Topicノーベル賞学者と「ピルの父」が集まった開発チーム

DENDRALの顔ぶれは、いま見ても豪華です。中心人物の一人は、細菌の遺伝のしくみを解明して1958年にノーベル賞を受けたジョシュア・レーダーバーグ。さらに、世界初の経口避妊薬を1951年に合成し「ピルの父」と呼ばれる化学者カール・ジェラッシも加わっていました。そこへAI研究者エドワード・ファイゲンバウムが合流し、分野を越えた知の結集から世界初のエキスパートシステムが生まれた、というわけです。

DENDRALに関するよくある質問

DENDRALは具体的に何の役に立ったのですか?
化学者が、未知の物質の分子構造を質量分析のデータから突き止める作業を助けました。あり得る構造を機械が大量に組み立て、データに合わない候補をふるい落とすことで、人が検討する手間を大きく減らしたのです。
「DENDRAL」という名前には意味があるのですか?
「Dendritic Algorithm(樹状アルゴリズム)」を縮めた名前です。分子の構造を、枝分かれする樹のように体系立てて数え上げていく手法にちなんでいます。
DENDRALは今も使われていますか?
現役のツールとしては使われていません。AIの主流は人が書いたルールから、大量のデータを自分で学ぶ機械学習へ移りました。DENDRALはその転換より前の、知識工学の出発点という位置づけです。

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