エキスパートシステムとは

エキスパートシステムとは、専門家の知識を「もし〜なら、〜する」というルールの形でコンピュータに教え込み、専門家のような判断を再現しようとするAIのことです。1970年代から80年代にかけて広まり、当時のAIブームを牽引しました。

どういう仕組みで動くのか

エキスパートシステムは大きく二つの部品でできています。専門知識を「もし熱があり、せきが出るなら、風邪の疑い」のようなルールとしてためておく「知識ベース」と、そのルールを次々あてはめて結論を導く「推論エンジン」です。人間の専門家に質問しながら答えにたどり着くように、条件をたどって判断を組み立てます。1980年代には、フォーチュン500社の3分の2ほどが何らかの形で使ったとされるほど広がりました。

今の機械学習との違い

最大の違いは、知識を「人が手で書く」か「データから学ぶ」かです。エキスパートシステムはルールを人間が一つずつ書き起こします。だから判断の根拠がはっきりしている反面、ルールが数万、数十万と増えると整合性を保てなくなり、行き詰まりました。これが1990年代の失速につながります。いまの生成AIは逆に、大量のデータから自分でパターンをつかむやり方で、この限界を乗り越えました。「ルールを書く時代」から「データに学ばせる時代」への転換を理解すると、AIの歴史の流れが見えてきます。

Topic名医なみの精度でも使われなかったAI

1970年代初頭にスタンフォード大学で作られた医療用エキスパートシステム「MYCIN」は、血液の細菌感染を診断して抗生物質を提案しました。その精度は専門医に並ぶ水準だったと評価されています。それでもMYCINは一度も実際の診療には使われませんでした。誤診したとき誰が責任を負うのかという倫理・法律の問題と、当時はパソコンもなく病院の仕組みに組み込めなかったことが壁になったのです。性能だけでは実用に届かない、という教訓は今も色あせていません。

エキスパートシステムに関するよくある質問

今の生成AI(機械学習)とは何が違うのですか?
最大の違いは知識の入れ方です。エキスパートシステムは人間がルールを一つずつ書き込みますが、生成AIは大量のデータから自分でパターンを学びます。前者は判断の根拠が明確な反面、ルールが増えると整合性を保てず破綻しやすく、それが1990年代の衰退につながりました。
いつごろの技術で、今も使われていますか?
1970〜80年代に全盛を迎え、当時のAIブームを支えました。生成AIが主流の今は第一線を退きましたが、判断の理由を明確に示せる強みから、ルールが重要な一部の業務では今も応用されています。
実際に役立つAIだったのですか?
スタンフォード大学の医療診断システム「MYCIN」は専門医に並ぶ精度とされましたが、誤診時の責任の所在や当時のIT環境の制約から、実際の診療には使われませんでした。性能の高さだけでは実用に届かないという教訓を残しています。