知識工学とは

知識工学とは、人の専門知識をコンピューターが検索・推論・再利用できる形に整理し、問題解決へ組み込むAI分野です。ベテランの頭の中にある判断基準を、組織で点検・更新できる設計図に変える取り組みと考えると分かりやすいでしょう。

聞き取りから更新までを設計する

まず専門家への聞き取りや実例の分析から、概念、関係、判断ルール、例外を取り出します。それを知識ベースオントロジー(概念と関係の設計図)へ落とし、テスト事例で結果を確かめる流れです。

完成後も、制度改定や商品変更に合わせて知識を直します。マニュアルを読ませて終わりではなく、誰がどの根拠を更新するかまで決めることが、工学と呼ぶ理由です。

機械学習とは知識の入れ方が違う

機械学習は、多くのデータからパターンを学びます。知識工学は、専門家の考え方や業務上の制約を、人が点検できる形で表すのが得意。知識ベース推論エンジンを組み合わせるエキスパートシステムは、記号AIの代表例です。

両者は二者択一ではありません。データから候補を見つけ、明示ルールで法令や社内基準に照らす構成も可能。結果の理由を説明したい業務では、機械学習のモデルと明示的な知識の役割分担が判断材料の一つです。

業務の「例外」を先に測る

導入前は、判断を口で説明できるか、例外がどれくらいあるか、知識の変更頻度を確認します。専門知識を集める工程は知識獲得ボトルネックになりやすく、少数の専門家だけが知る審査基準の共有には向く一方、毎回状況が違い、理由を言語化できない仕事には重荷です。

精度だけでなく、知識を修正するまでの時間と、例外を人へ戻す割合を測りましょう。システムが正しくても、現場で更新できなければ知識は古くなります。

TopicAIの知識を「工学」と呼んだ半世紀前

1977年の国際人工知能会議IJCAIで、エドワード・ファイゲンバウム氏は「Knowledge Engineeringのテーマと事例」を題した招待論文を発表しました。ChatGPT公開の約45年前に、AIの知識を偶然のひらめきでなく、再現可能な工程として扱う名前が前面に出ています。

知識工学に関するよくある質問

知識工学とナレッジマネジメントは何が違いますか?
ナレッジマネジメントは、組織内で人が知識を共有・活用する管理を広く指します。知識工学は、その一部をコンピューターが推論できる表現に変換し、システムへ組み込む点に重心があります。
生成AIがあれば知識工学は不要ですか?
不要とは言えません。生成AIは柔軟な文章処理に向きますが、法令や社内基準のように理由と更新履歴を明確にしたい知識では、明示ルールやオントロジーとの併用が役立ちます。
知識ベースは誰が更新するべきですか?
業務を知る専門家と、表現・テストを担う技術者の共同管理が基本です。制度や商品の変更時に、根拠、承認者、適用日、回帰テストを記録できる運用が欠かせません。

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