KnowledgeForge(ナレッジフォージ)とは

KnowledgeForgeとは、解決済みのITインシデントチケットから、再利用できるナレッジベース記事や根本原因分析の記事を作り、品質確認と承認までつなぐAWS SamplesのAI参考実装です。AWSが提供するマネージドサービスや正式サポート製品ではなく、自社で検証して組み立てるためのサンプルコードとして公開されています。

解決済みチケットから記事を生成し、重複・品質確認と人のレビューを経て承認済みナレッジへ進む5段階の流れを示した図。

英語表記:KnowledgeForge

解決済みチケットをどう知識に変える?

ITサービス管理では、障害や問い合わせを解決しても、経緯がチケットの中に残ったまま再利用されないことがあります。担当者が似た問題を一件ずつ探し、対応を再現する状態です。KnowledgeForgeは、解決済みチケットを材料に、新しいKB記事やRCA記事を作る流れを示します。KBは再利用する手順や知見、RCAは問題の根本原因を整理した記録です。

公式リポジトリでは、二つのサブシステムを分けています。Content Synthesisは、似たチケットのまとまりから記事を生成する入口。Content Pipelineは、記事の分類、意味が近い記事との重複確認、品質評価、内容の充実、レビュー依頼を進める工程です。記事を作る機能と、公開可能な知識へ整える機能を分離している点が特徴でしょう。

AWS上ではどのように構成される?

2026年8月時点のREADMEでは、記事生成側のバッチ処理にAmazon ECS on AWS Fargate、記事処理側の流れにAWS LambdaとAWS Step Functionsを使います。文章生成と内容の充実にはAmazon Bedrock上の生成AI、意味の近さを比べる埋め込みとベクトル検索にはAmazon S3 Vectorsを使います。

埋め込みとは、文章の意味を数値の並びに変換する処理。言葉が完全一致しなくても、内容が似た記事を探すために使います。ただし、似ていることと、同じ手順で解決できることは別です。製品版、地域、設定、障害時期が違えば対応も変わるため、元チケットと証拠へ戻れるようにします。

人のレビューを外さない理由

KnowledgeForgeは、生成した記事をJiraへ送り、ナレッジ管理の担当者が承認または却下する流れです。AIが読みやすい文章を作っても、古い回避策、偶然うまくいった操作、秘密情報が混じる可能性は残ります。自動生成から社内公開までを無審査で直結させる設計ではありません。

レビューでは、手順の再現性、対象環境、権限、更新日、元チケットとの一致を確かめます。承認後も、製品更新や再発結果を受けて記事を直す仕組みが必要です。ナレッジベースは一度作れば終わる文書庫ではなく、利用と修正を繰り返す運用資産になります。

導入前に確認すべき境界

最初に、取り込めるチケットと除外する情報を決めます。ITSMチケットには氏名、連絡先、端末名、顧客環境、認証に関する記述が含まれる場合も。生成AIへ渡す前の匿名化、アクセス権、暗号化、保存期間を設計し、テナント(=同じ仕組みを共同利用する顧客や部門ごとの区画)の間で、検索結果や設定が混ざらないかも試験します。

次に、サンプルが示す構成をそのまま正解と見なさないこと。利用できるモデル、AWSサービス、料金、Jiraの設定は変わり得ます。自社の地域と契約で提供状況を確認し、少量の匿名化データで生成品質、重複判定、処理費用、失敗時の復旧を測る段階です。AWS Samplesの注意書きに沿い、セキュリティと本番運用への最適化は利用者が担います。

経営判断では何を測る?

記事数を増やすだけでは、知識活用の成果を判定できません。検索後に問題を解決できた割合、古い記事の修正数、重複記事、レビューの所要時間、誤った手順による差し戻しを追います。生成件数より、再利用できる承認済み知識が増えたかを中心に置くべきです。

すでにAmazon BedrockやJiraを利用していても、KnowledgeForgeの採用が自動的に決まるわけではありません。既存のナレッジ管理プロセス、データ保管方針、レビュー担当者の負担と比較し、必要な部分だけを参考にします。固有製品というより、ITSMの知識循環をAWS上で試す設計例として読むのが適切です。

Topic公開版は機密情報を除いた「参照コピー」

公式READMEは、公開リポジトリをサニタイズ済みの参照コピーと説明しています。AWSアカウントID、KMS ID、テナントID、バケット名などはプレースホルダへ置換されており、複製するだけで自社環境が完成するものではありません。

KnowledgeForgeに関するよくある質問

KnowledgeForgeはAWSコンソールから有効化できますか?
できません。単一のAWSサービスではなく、複数のAWS機能と外部ツールを組み合わせる参考コードです。利用者が環境を構築し、保守します。
ServiceNowなどJira以外のITSMにも接続できますか?
公開構成はJiraを前提にしています。別製品へ接続する場合は、レビュー依頼、状態遷移、権限、失敗時の戻し方を含む連携部分の開発と試験が必要です。
既存ナレッジを全部読み込ませればよいですか?
先に重複、更新日、閲覧権限、個人情報を棚卸しします。少量の代表データで評価基準を固め、誤った記事が検索へ混ざらないことを確認してから範囲を広げます。

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