推論エンジンとは

推論エンジンとは、事実やルールを蓄えた知識ベースに「もし〜なら〜」という規則を次々と当てはめ、新しい結論を自動的に導き出すソフトウェア部品です。専門家の判断を再現するエキスパートシステムの中核として、1965年から1980年代にかけて発展しました。ChatGPTの一般公開(2022年11月30日)より約40年も前から、AIは「考える仕組み」を持っていたわけです。

知識ベースとの二人三脚で答えを出す

当時のシステムは、知識の蓄え(知識ベース)と、それを使って考える部品(推論エンジン)の2つで一組でした。料理にたとえるなら、冷蔵庫の食材が知識ベース、レシピを見ながら調理する手が推論エンジンという分担です。

考え方の進め方は大きく2通りあります。手元の事実から結論を積み上げる前向き連鎖と、結論の候補から逆算して必要な事実を確かめる後ろ向き連鎖です。ここでの「推論」は人間のひらめきとは別物で、ルールを機械的に当てはめる処理を指す点は押さえておきたいところでしょう。

エキスパートシステムの心臓部だった

初期の推論エンジンはLispというプログラミング言語で作られ、OPS5やPrologといった代表的な仕組みを生みました。医療の診断支援や機器トラブルの切り分けなど、専門家の頭の中のルールを移し替える用途で使われています。当時のAIブームを支えた立役者です。

いまのビジネスで目にする場面

この型の仕組みは過去の遺物ではありません。与信審査や料金判定のようにルールを明文化できる業務では、ビジネスルールエンジンという形で現役です。なぜその結論になったかを後からたどれるため、説明責任が問われる判断と相性がよいのです。

一方で、ルールに書かれていない想定外の事態には対応できません。理由を示せるルール型と、柔軟だが根拠の見えにくい生成AI。どちらか一方ではなく、業務の性質で使い分ける視点が大切になります。

Topic「推論エンジン」は、LLM時代に二度目の主役を迎えた

実はこの言葉、いま再び脚光を浴びています。米カリフォルニア大学バークレー校の研究室から生まれたvLLMのような、LLMを高速に動かす基盤ソフトが「推論エンジン」と呼ばれているのです。名前は同じでも中身は別物。古典AIでは論理ルールの適用役、LLM時代では学習済みモデルの計算を効率よくさばく裏方を指します。約半世紀を経て、同じ名前が違う仕事で復活したと考えると面白いところです。

推論エンジンに関するよくある質問

推論エンジンとLLMは何が違いますか?
推論エンジンは人手で書いたルールを当てはめて結論を出す仕組みで、LLMは大量のデータから学んだ傾向をもとに文章を生成します。前者は理由を追える代わりに想定外に弱く、後者は柔軟な代わりに根拠が見えにくいという違いがあります。
推論エンジンの「推論」は、人間の推論と同じ意味ですか?
違います。ここでの推論は「もし〜なら〜」というルールを機械的に繰り返し適用する処理のことで、ひらめきや直感のような働きは含みません。
推論エンジンはいまも使われていますか?
与信審査や料金判定など、ルールを明文化できる業務では現役で使われています。また近年は、LLMの応答生成を高速化する基盤ソフトの呼び名としても定着しつつあります。

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