NETtalk(ネットトーク)とは

NETtalkとは、英語の文章を読み上げるために、つづり(文字の並び)から発音への置き換えを、例を見せて学ばせたニューラルネットワークです。ジョンズ・ホプキンス大学のTerrence Sejnowski氏とプリンストン大学のCharles Rosenberg氏が、1987年の論文にまとめました。

英語表記:NETtalk/論文名:Parallel Networks that Learn to Pronounce English Text(1987年)

何を、どうやって学ばせた?

仕組みは、7文字分の窓から英文をのぞき、まん中の1文字をどう発音するかを答えさせるというもの。窓を1文字ずつずらしながら読み進めます。ネットワークは入力側203個、中間の層(隠れ層)80個、出力側26個の部品でできていて、部品どうしのつながりの強さを表す数字は全部で18,629個ありました。答えが外れるたびに、そのずれを出力側から入力側へさかのぼって配り、つながりの強さを少しずつ直す。学習には、ラメルハート氏らの1986年の論文で示された誤差逆伝播法(バックプロパゲーション)を使っています。

では、ネットワークは何を答えるのか。音そのものではなく、発音の最小単位である「音素」です。出てきた音素の並びを市販の音声合成装置DECtalkに流すと、ネットワークの読み上げを耳で確かめられました。論文によると、DECtalkはよく使う語や不規則なつづりの語の読みを約100万ビットの対応表に持ち、表にない語を発音の規則で処理していました。人が用意した表と規則の役目を、例から学ぶ小さなネットワークでどこまで果たせるかを試したのがNETtalkです。

どのくらい読めるようになった?

論文の数字は、単語ではなく正しく選べた音素の割合です。会話の書き起こし1,024語で練習させると、全体を50回くり返したところで95%に達しました。同じ話し手の続き439語を、練習させずに読ませても78%。覚えた語だけでなく、初めて見る語にもかなり通用したことになります。辞書の20,012語でも、よく使われる1,000語で練習したネットワークが、練習なしで辞書全体の77%を当て、辞書を5周練習すると90%まで上がりました。

つながりの強さにでたらめな乱れを加えて「壊して」も、成績はゆっくりとしか下がらず、壊れたあとにもう一度練習させると、最初よりずっと早く元の成績に戻ったと報告されています。どれか1本のつながりや1個の部品に頼っていないから、というのが著者らの説明です。論文は自分たちのやり方を、単純な部品をたくさんつないで知識を持たせる「コネクショニスト」の方法と位置づけていました。

論文自身が書いた限界

7文字の窓の外にある手がかりは使えません。離れた位置で決まる強勢(アクセント)など、発音に大事な情報の一部を取りこぼすことは、著者ら自身が認めています。目的は完全な読み上げではなく、情報を多くの部品に分けて持つ仕組みの基本を、現実の題材で確かめることだった、とも断っています。今の音声合成の性能と比べる研究ではない、と読むのが正確でしょう。

Topic最初の教材は、小学1年生の子どもの話し言葉だった

NETtalkが最初に練習した文章は、子どもや大人のくだけた会話を録音して発音記号に起こした記録集(1974年刊)のうち、小学1年生の子どもの話の最初の2ページでした。同じ語でも言い方がまちまちで、著者らは「大人も子どもと同じくらい一定しなかった」と書いています。学び始めのネットワークは、母音はどれも同じ母音、子音はどれも同じ子音で答えたため、喃語(言葉になる前の赤ちゃんの声)のような音になりました。やがて単語の切れ目をつかむと、それらしい架空の単語のような音に変わり、10回ほど通したところで文章が聞き取れるようになったといいます。

NETtalkに関するよくある質問

当時、学習にはどのくらい時間がかかったのですか?
論文によると、つながりの強さが1万個ほどのネットワークで、学習中に処理できたのは当時のコンピューターVAX 11/780で1秒に約2文字でした。7文字の窓のネットワークなら数日で学習させられた、と書かれています。
NETtalkの学習データは、いまも手に入りますか?
手に入ります。論文で使った辞書のデータを更新・修正した版(英単語20,008語と、それぞれの発音記号)が、カリフォルニア大学アーバイン校の機械学習データの公開庫に「Connectionist Bench (Nettalk Corpus)」として載っています(2026年10月時点)。
NETtalkは、どんな間違い方をしたのですか?
似た音どうしを取り違えることが多く、よくあったのは「thesis」と「these」の「th」の取り違えでした(声帯を震わせるかどうかだけが違う音)。よく学習したネットワークでは母音と子音の取り違えはほとんどなく、誤りの中には、練習用の書き起こしのほうの不統一を正していたものもあった、と論文は書いています。

あわせて読みたい記事