アンソロピックの初級技術職の採用比率が27%から9%に【AI活用が進む社内の変化】

27%から9%という数字の分母を知っておくと、ニュースの印象に振り回されず、自分の学び方や新人の育て方を考えやすくなります。
アンソロピックの社内で、初級技術職の仕事は実際にどう変わったのでしょうか?

アンソロピックの初級技術職の採用比率が27%から9%に【AI活用が進む社内の変化】

Claudeを開発するAnthropic(アンソロピック)が2026年10月16日、社内でAIの活用が雇用と仕事の中身をどう変えたかを調べた研究を公開しました。

なかでも目を引くのが、技術職の新規採用に占める初級職の割合が27%から9%に下がったという数字ですが、これは採用した人数が3分の1になったという意味ではありません。

数字の分母と期間を押さえておけば、初級技術職を目指す人も新人を育てる立場の人も、この研究を自分の次の一手に生かしやすくなります。

アンソロピックの初級技術職の採用比率27%から9%は何の割合か

アンソロピックの研究が示した27%から9%は、技術部門で新たに採用した人のうち、初級職が占める割合の変化です。

研究の原文で初級職は、juniorや低い等級(lower band)と表される社内の初級レベルの技術職を指し、年齢や新卒区分との対応は示されていません。
日本では「若手」と訳されることもありますが、20代の採用が減ったと読み替えると研究の内容から離れてしまいます。

採用比率と在籍比率は分母が違う

同じ研究には、技術部門の在籍者に占める初級職の割合が2025年初めから21%→14%に下がったという数字もあり、こちらは採用比率とは分母が異なります。

指標分母変化
新規採用の比率技術職の新規採用者27%→9%
在籍の比率技術部門の在籍者21%→14%

研究の図に描かれているのは2025年春から2026年半ばまでの推移で、観測は2025年から2026年前半にかけての社内データです。
公開は10月でも、2026年10月時点の求人の状況を示す数字ではありません。

出典:Anthropic「How employment is changing at Anthropic」(英語)

技術職の採用は人数では増え続けた

割合が大きく下がった一方で、研究は技術職の採用は絶対数では増え続け、営業・財務・採用部門の採用がそれ以上に伸びたと書いています。

なお、会社全体に占める技術部門の人員の割合も1年で61%から56%へ下がりましたが、これは全社の部門構成の話です。
技術職の中で初級職が占める割合とは分母が違うため、営業などの採用増だけで27%から9%への変化を説明できるわけではありません。

ただし、初級技術職を何人採用したのか、解雇があったのかは研究に書かれていません。
そのため、この数字を見る時は人数と割合を分けて読むのが確実です。

アンソロピック社内で初級技術職の仕事はどう変わったか

アンソロピックの社内では、初級技術職が担ってきたコードを書く作業やバグを探す作業を、Claudeに任せられるようになったことが変化の出発点でした。

コードを書く・バグを探す作業がClaudeへ移った

研究によると、2026年1月に中核の技術部門で初級技術職の需要が下がっているという議論が始まり、4月までにはエンジニアリングと研究のチームが低い等級の技術職の採用を重視しなくなりました。

仕事が移ったのは技術職に限らず、Claude.aiのあいさつ文などを書いていた製品デザインのチームは、エージェントへの指示や、Claudeの評価とプロンプトを書く仕事へ移っています。
ただし、これは在籍する社員の仕事が変わった例で、初級職の採用比率とは別の話です。

AIの出力を見る人の注意力が足りなくなった

AIが作業を引き受けるほど、出力を読んで判断する人の手が追いつかなくなり、研究は人の注意力が仕事の詰まりどころになったと書いています。

社員がClaudeと対話しながら進める一続きの作業(セッション)では、時間の約80%が人の入力待ちで、技術部門以外の社員でも、Claudeの出力を全部読むと週の労働時間の半分を超える計算でした。

そこで増えたのが「メタワーク」と呼ばれる仕事で、AIエージェントに渡す仕様書づくりや、あるエージェントの出力を別のエージェントに確かめさせる仕組み、作業の流れの監視などを指します。
対話セッションに占めるメタワークの割合は、2025年秋の10%から2026年春の22%に増えました。

Claudeに移った作業

コードを書く
バグを探す
進み具合の記録
メールの下書き

人に増えた・残った仕事

エージェントへの仕様と指示
出力の確認とレビュー
作業の流れの監視
対面での調整と判断

人間どうしの調整が減ったわけでもなく、研究は組織の課題を解くための判断や対面での話し合いを、欠かせない仕事として挙げています。

採用の面接では自律性と判断力が重視されるようになった

仕事の中身の変化は採用にも表れ、技術職の面接評価では応募者の自律性と判断力への言及が最も増え、特定分野の専門知識への言及は比重が下がりました。

AIツールを工夫して使った実績への言及も、2024年には技術職の評価の約5%でしたが、2026年には3倍に増えています。
とはいえ技術の知識が要らなくなったわけではなく、知識を土台にAIの出力を確かめて判断した経験が、同社のような職場で問われやすくなっていると読むのが自然でしょう。

メモ面接評価の変化は、2024年以降に採用した数千人分の評価コメントを、研究チームが自動で分類して数えた結果です。

アンソロピックの採用データから言えること・言えないこと

アンソロピックの研究から言えるのは、AIの活用が深まった時期に初級技術職の採用比率が下がり、社内でもAIを理由に挙げる声があったことまでで、AIだけが原因だと証明されたわけではありません。

生産性の分析は採用比率低下の原因の証明ではない

研究では、エンジニア1人あたりのコミット(コードの変更記録)が半年前と比べて5倍の速さになったと報告されています。
ただし、品質や利益が5倍になったという意味ではなく、研究自身もコードの量と事業の成果を分けています。

この全体の推移とは別に、研究はAIのコーディングツールを導入した社員と未導入の社員を同じ月で比べ、導入後のコード量の増加を分析しました。

この比較について研究は、ツールの利用は社員自身の選択であり、大きな仕事を控えた人ほど先に使い始めるといった偏りが推定に入りうると認めています。
つまり、生産性が伸びたことと、採用比率が下がった原因がAIであることは、別々に確かめなければなりません。

採用への影響について研究が示すのは、4月の調査でAIを理由に採用を減らしたと答えた管理職が機械学習の分野で約3分の1、ソフトウェア開発で約5分の1いたという本人たちの回答です。
この自己申告からは、初級職の採用比率の低下にAIがどれだけ影響したかまでは分かりません。

AI開発企業の事情を日本の採用にそのまま当てはめない

アンソロピックはAIを開発し、社内の仕事の進め方をAI前提で組み替えてきた会社で、研究も同社の雇用慣行には、経済全体では再現できない部分が多いと断っています。
同じ日に公開された意識調査でも、2030年にAIが担えると見込む仕事時間の割合は社員の平均75%に対して米国の就業者は28%で、この差の読み方はAIは2030年に仕事の何割を担うかの予測の差で解説しています。

同社は仕事の変化を早めに見つける仕組みづくりを進め、社内の配置転換を優先していますが、研究自身が「今いる社員を守る取り組みは、最初から採用されなかった人の助けにはならない」と書いている点も見落とせません。
雇用への影響に関わる同社の動きには、別に公表された株式を公益基金へ拠出する計画もありますが、こちらは研究とは別の発表です。

初級職の人数

採用した人数や解雇の有無は示されていません。

年齢の区切り

研究内の初級レベルで、年齢との対応は示されていません。

AIだけの影響

採用比率の低下にAIがどれだけ寄与したかは示されていません。

日本への当てはめ

日本の企業や求人の数字は含まれていません。

日本の企業の採用がどう変わるかを示す数字はこの研究に無いため、自社の採用計画を同社の構成比に合わせて決めるのは避けたいところです。
見直すなら、まず自社でAIに移せる業務と人に残る業務を書き出すところから始めると、他社の数字に引きずられずに判断できます。

初級技術職を目指す人と育てる側が見直したいこと

初級技術職の採用比率が下がったと聞くと、基礎を学ぶ意味が薄れたように感じるかもしれませんが、Anthropicの別の研究はAIと一緒に作業する場面でも、課題への理解と作業の成功に関連があることを示しています。

AIがコードを書いても課題の理解は要る

2026年6月に公開された研究はClaude Codeの約40万件のセッションを分析し、扱う課題についての専門性が高い人ほど作業を成功させやすいと報告しました。

ここでいう専門性は役職や一般的な能力ではなく課題ごとに測ったもので、コードを書く訓練を受けたかどうかより、解こうとしている問題をどれだけ理解しているかが成功を分けたとされています。

出典:Anthropic「Agentic coding and persistent returns to expertise」(英語)

一方で2026年1月に公開された学習の実験では、主に初級のエンジニア52人が新しいPythonのライブラリを学び、直後の理解度テストはAIを使った群が平均50%、手で書いた群が67%でした。

両群の差が最も大きかったのは、コードの誤りに気づいて原因を探すデバッグの問題でした。
説明や概念を質問しながらAIを使った人は得点が高い傾向もありましたが、小規模で直後の理解だけを測った実験で、使い方別に見た得点差については因果関係まで確かめていません。

出典:Anthropic「How AI assistance impacts the formation of coding skills」(英語)

学ぶ人は「作れた理由」を説明できる記録を残す

研究が効果を確かめた方法ではありませんが、私たちは初級技術職を目指す人に、AIで動くものを作れたかどうかに加えて、なぜその作り方なのかを自分の言葉で説明できる記録を残すことをすすめます。

何を作るか
→
下書きを出す
→
テストで見る
→
直した点も
AIの答えをそのまま使わず、確かめ方と直した理由まで自分で説明できるかを見る

この記録は、アンソロピックの面接で重視されるようになった判断力を自分で示す材料にもなりえますが、採用につながると保証するものではありません。
AIに任せる作業と自分で練習する作業の分け方は、生成AIに任せすぎると社員のスキルは落ちるのかで詳しく扱っています。

育てる側は任せる作業・練習の課題・承認する人を分ける

新人を育てる側にとって気がかりなのは、研究が一部の役割では、社員がもともとスキルを身につけた現場の作業から離れつつあると書いている点です。

新人に任せていた作業をAIへ移すと、将来の担い手が判断の土台を学ぶ機会も一緒に減るおそれがあるため、私たちは次の3つを分けて決めることを提案します。

提案AIへ移す前に分けて決める3つ

AIへ移す作業
コードの下書き、定型のテスト、進み具合の記録など

新人に練習として残す課題
影響の小さい修正を、先輩のレビュー付きで最初から最後まで担当する

承認する人
外部への送信や本番環境の変更は、AIの出力を人が確かめてから実行する

新卒や若手の採用計画を見直す場合も、技術職の人数を先に減らすより、この3つを書き出して育成の受け皿がどれだけ残るかを確かめてから判断するほうが無理がありません。
外部への送信や本番の変更をAIに任せる時の止め方は、AIエージェントの承認フローは閲覧・提案・実行で分けるで手順を確かめられます。

アンソロピックの初級技術職の採用に関するよくある質問

Q27%から9%は、アンソロピックが初級技術職の採用人数を減らしたという意味ですか?

A27%から9%は、技術職として新たに採用した人に占める初級職の割合の変化です。研究は技術職の採用が絶対数では増え続けたと書いており、初級技術職を何人採用したかは示していません。

Q初級技術職は新卒や若手のことですか?

A研究が指す初級職は社内の初級レベルの技術職で、年齢や勤続年数、新卒区分との対応は示されていません。そのため、この数字を20代や新卒の採用の変化と読み替えないようにしましょう。

Q初級技術職の採用比率が下がったのは、AIが原因だと証明されたのですか?

A証明されたわけではありません。AIを理由に採用を減らしたと答えた管理職はいますが、研究は初級職の採用比率の低下について、AIと他の要因を切り分けた寄与率を示していません。

Q日本の企業でも初級技術職の採用は減っていますか?

Aこの研究はアンソロピック1社の社内データで、日本の企業や求人の数字は含みません。研究自身も同社の雇用慣行には経済全体では再現できない部分が多いと述べているため、日本の状況は国内の統計や各社の採用情報で別に確かめる必要があります。

QAIがコードを書くなら、プログラミングを学ばなくてもよいですか?

Aそうとは言えません。Anthropicの別の研究では課題を深く理解している人ほどAIとの作業を成功させやすく、学習の実験ではAIを使った群の直後の理解度テストが手で書いた群より低い結果でした。

Q初級技術職を目指す人は、今から何を準備すればよいですか?

A研究が効果を確かめた方法ではありませんが、AIで作ったコードについて、要件と確かめ方と直した理由を自分の言葉で説明できる記録を残すことをおすすめします。応募先を選ぶ時は、仕事の内容に加えて、新人へのレビューや研修の体制も確かめておくと安心です。

まとめ

アンソロピックの初級技術職の採用比率27%から9%は技術職の新規採用に占める初級職の構成比で、技術職の採用人数そのものは増えていました。

社内ではコードを書く作業がClaudeへ移り、人には指示と確認、判断と調整の仕事が増えましたが、AIだけが原因か、日本でも同じことが起きるかは、この研究からはまだ分かりません。

初級技術職を目指す人は応募先の仕事内容と新人の育て方を、育てる側は自社でAIに移す作業と新人に残す課題を、それぞれ確かめるところから始めてみてください。

GLOSSARY

AI用語集

2372 語を収録

意味の解説から背景の意外な逸話まで、AIの専門用語を一語ずつ。非エンジニアの視点で噛み砕いた、引くほど詳しくなる用語集です。

用語集を見る