Zhipu AI(ジープーエーアイ)とは
Zhipu AIとは、中国の清華大学にゆかりのある研究者たちが2019年に設立した、大規模言語モデル「GLM」シリーズを開発するAI企業です。本社は北京。海外向けのサービスは「Z.ai」の名前で出しています。2026年1月に香港取引所へ上場し、同年7月には会社の英語名もZ.AI Co., Ltd.に変わりました。
中国語表記:智譜AI(社名は北京智譜華章科技)/英語の社名:Z.AI Co., Ltd.(2026年7月までの英語名はKnowledge Atlas Technology)/海外向けの名前:Z.ai
Zhipu AIとZ.aiは、同じ会社?
同じ会社です。Zhipuは、中国語の社名「智譜」をローマ字で書いたもの。Z.aiは、海外向けのサイトとAIのサービスに使われてきた名前です。
2026年7月8日には、香港で登記している英語の社名もZ.AI Co., Ltd.に変わりました。それまでの英語名は、Knowledge Atlas Technology。香港取引所での英語の略称も、7月17日から「Z.AI」になっています。
中国語の社名と、取引所での中国語の略称「智譜」は変わっていません。ニュースや資料で「Zhipu AI」「智譜」「Z.ai」「Knowledge Atlas」のどれを見ても、同じ会社を指しています。
大学の研究から始まり、APIで稼ぐ会社へ
設立は2019年6月。清華大学で知識工学を研究してきたグループと関係の深いチームが立ち上げ、同大学系の技術移転会社も設立時の株主に加わりました。ChatGPTの公開(2022年11月30日)より3年以上前のことです。
上場時の目論見書は、調査会社フロスト・アンド・サリバンの集計を引いています。2024年の売上で比べると、中国で汎用の大規模モデルを開発する企業のうち2位(独立系の企業では1位)で、シェアは6.6%。
稼ぎ方は、この1年あまりで入れ替わりました。2024年は、売上の84.5%が顧客の設備にAIを設置する形。2026年1〜6月は、使った分だけ料金を払うAPIなどの売上が86.5%を占めます。プログラムを書く作業をAIに任せる使い方が主な収入源になった、というのが会社の説明です。
売上は伸びていますが、赤字が続いています。2026年1〜6月の売上は約9億5,400万元(約1億4,200万ドル)で、前年の同じ時期の約5倍。研究開発費は、その2倍を超える約21億3,100万元でした。
GLMは、AIの中身まで公開されている
主力は「GLM」と名のつくAIの系列です。2025年9月のGLM-4.6から2026年8月のGLM-5.3まで、約11か月のあいだに6回、新しい版を出しました。
特徴は、AIの中身にあたるデータ(重み)を公開していること。こうした公開のしかたが、オープンウェイトです。公開された重みは自社のコンピュータに入れて動かせるので、社外にデータを出さずにAIを使いたい会社には、選択肢が1つ増えます。
使うときの条件は、版ごとに確かめてください。2025年7月のGLM-4.5から2026年6月のGLM-5.2までは、商用利用も改変もできる、制限の少ないMITライセンス。2026年8月のGLM-5.3は、独自の「GLM-5.3 License」に変わりました。
MITライセンスとの大きな違いは、大規模な事業者向けの条件です。AIを他社に使わせるサービスを営み、グループの売上が12か月で100億ドルを超える事業者は、商用利用の前にZ.AIの安全審査を通らなければなりません。ふつうの利用企業には関係しない線ですが、「GLMはすべてMITライセンス」とは言えなくなりました。同じ月に出た軽量版のGLM-5.3-Flashは、MITライセンスのまま。
米国の「エンティティリスト」に入った、とはどういうこと?
2025年1月16日、米国の商務省は、Zhipu AIの本体と子会社9社を「エンティティリスト」に加えました。米国の安全保障や外交上の利益に反すると判断した相手を載せる一覧です。
米国の官報に書かれた理由は、先端的なAI研究の開発と統合を通じて、中国の軍事の近代化を進めている、というもの。会社は目論見書で、事業と業績に重大な悪影響は出ておらず、規制の範囲が広がらない限り近い将来も出ない、という見方を示しています。
決まりの中身を見てみましょう。米国の輸出管理の対象になる製品、ソフトウェア、技術を、この10社へ輸出したり渡したりするには、米国政府の許可が必要。対象は米国製に限らず、米国の技術を一定以上含むほかの国の製品にも及びます。申請は原則として認められません。縛られるのは「Zhipu AIに物や技術を渡す側」。同社のAIを使うこと自体を禁じる決まりではないのです。
ただし、使うなかで規制の対象になる技術情報を同社へ送るなら、話は別。Z.aiの利用規約も、輸出の許可が要る情報を入力しないよう求めています。自社の取引が当てはまりそうなときは、輸出管理の担当者や専門家に確かめてください。
影響は、設備の調達に表れています。目論見書によると、同社はリストに入ったあとAI向けの半導体を買っておらず、計算に使う設備は中国のクラウド事業者から借りてきました。2026年8月の決算発表では、AIを動かす処理の主力に中国製の半導体を据えた、と説明しています。
日本の会社が使うときに見ておく点
使い方は、大きく3つ。
はじめの2つは、Z.aiの規約に従います。規約のうえでの運営者は、シンガポールの会社です。サービスは通常シンガポールから提供し、データも通常はシンガポールで処理する、と書かれています。契約に適用されるのはシンガポールの法律で、争いはシンガポールの仲裁機関で解決する決まりです。
目論見書には補足があります。端末の種類や利用時間といった匿名の技術データは、処理のために中国国内のグループ会社へ送られたことがある、という説明です。
入力した内容がAIの改良に使われるかどうかは、契約の種類で分かれます(利用規約は2026年4月、データの取り扱いの文書は2025年9月の版)。個人向けのサービスでは、入力した内容がサービスの改善に使われることがあります。企業や開発者向けのAPIでは、利用者がはっきり同意しない限り改善には使わず、入力や出力の内容は保存しない、という記載です。
料金はどのくらいでしょうか。APIでGLM-5.3を使う場合、100万トークンあたり入力が約1.4ドル、出力が約4.4ドル(2026年10月時点)。トークンは、AIが文章を区切って数える単位です。
言葉の面では、GLM-5.3の重みの配布ページが対応言語として挙げているのは、英語と中国語の2つ。日本語の業務で使うなら、自社の文章で出来ばえを確かめてから判断するのが確実でしょう。
Topic香港に上場するとき、米国の投資家は株を買えなかった
Zhipu AIは2026年1月8日、香港取引所に上場しました(証券コード2513)。ところが目論見書によると、このときの株の売り出しに、米国の投資家は参加できませんでした。同社がエンティティリストに入っているため、中国への投資を制限する米国の規則(2025年1月に発効)で、上場前の株を米国の人や会社が取得することが、原則として禁じられていたからです。上場して市場で売買されるようになった株は、この禁止の例外にあたる、とも書かれています。規制のリストは、設備の調達だけでなく、資金の集め方まで変えていました。
Zhipu AIに関するよくある質問
- 「GLM」は何の略ですか?
- General Language Model(汎用の言語モデル)の略です。上場時の目論見書によると、Zhipu AIは2020年にこの名前の仕組みの開発を始め、2021年にパラメータ100億個の規模のモデル「GLM-10B」を公開しました。
- 「智譜清言」とは何ですか?
- Zhipu AIが2023年に中国で出した対話AIの製品で、英語ではZhipu QingYanと書きます。目論見書は、中国で当局への届け出を済ませた、最初期の国産の大規模モデル製品の1つだと説明しています。
- 無料で試せますか?
- 目論見書によると、個人はZ.aiのサイトなどを通常は無料で使え、一部の高度な機能が有料です。開発者向けの料金表にも、GLM-4.7-Flashのように無料と表示されたモデルがあります(2026年10月時点)。