市販後モニタリングとは
市販後モニタリングとは、AIを市場に出した「後」も、提供者がその動作を継続的に見守り続ける仕組みのことです。EUのAI規制(EU AI法)が高リスクAIの提供者に課す義務で、第72条に定められています。
英語表記:Post-market monitoring(EU AI法 第72条)
売って終わりにしない、という発想
市場に出した後のAIは、実際の使われ方の中で予期せぬ不具合や精度の低下を起こすことがあります。そこで提供者は、稼働期間を通じて性能データを集め、分析し、記録する体制をあらかじめ整えておくこと。この活動は書面の「市販後モニタリング計画」に基づいて行い、技術文書の一部にします。
重大インシデント報告とセットで働く
混同しやすいのが、第73条の「重大インシデント報告」です。両者は役割が違います。日々の監視で異常の芽を捉えるのが市販後モニタリング、その中で死亡など重大な事故が起きたとき当局へ届け出るのが重大インシデント報告。見守る仕組みと、いざというときの通報、という分担です。
経営にとっての意味
高リスクAIをEU市場に出す企業は、開発して売ったら終わり、とはいきません。運用フェーズでもデータを集め続ける体制とコストを、最初から見込んでおく必要があります。裏を返せば、現場の使われ方が継続的にメーカーへ届く仕組みでもあり、製品改善のヒントになりうるでしょう。
Topic発想のルーツは医薬品の世界
「市販後」という考え方は、もともと医薬品や医療機器の安全管理から来ています。薬が承認後も副作用を追跡し続けるのと同じように、AIも世に出した後の挙動を見守り続けよ、というわけです。製品安全の長い伝統が、新しい技術であるAIにそのまま持ち込まれた格好。
関連用語
市販後モニタリングに関するよくある質問
- 監視するのは提供者ですか、使う側ですか?
- 義務を負うのは主に提供者(AIを開発・市場投入する側)です。ただし使う側(デプロイヤー)も、運用で気づいた不具合を提供者へ知らせる役割を担い、両者で監視が成り立ちます。
- いつから守る必要がありますか?
- 高リスクAIへの適用は2026年8月2日が予定されています。2025年の簡素化案(Digital Omnibus)で時期が動く可能性があり、2026年6月時点では元の期限が有効です。
- 監視で問題が見つかったら、どうなりますか?
- 不具合の是正や、必要に応じた製品の改善につなげます。死亡など重大な事故にあたる場合は、別途「重大インシデント報告」として当局への届け出が必要になります。