AI推進法(えーあいすいしんほう)とは
AI推進法とは、AIの研究開発と活用を国として後押しするための、日本で初めての基本的な法律です。2025年5月28日に成立し、同年9月1日に全面施行されました。注目したいのは、その狙いが「縛ること」ではなく「進めること」に置かれている点です。AIの活用を伸ばしながら、行き過ぎたリスクには対応する。その両立をめざす、いわばAI政策の土台を定めた一本といえます。
正式名称:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律
この法律が定めていること
柱になるのは、政府全体でAIを推進する体制づくりです。内閣にAI戦略本部(内閣総理大臣をトップとし、すべての閣僚で構成する司令塔)を置き、国としての方針をまとめた「AI基本計画」を策定すると定めました。あわせて、研究開発や人材育成の後押し、AIにまつわる権利侵害などへの対応も盛り込まれています。背景にあるのは、日本はAIの開発・活用で海外に遅れがちで、一方で国民にはAIへの不安もあるという課題感でしょう。そのどちらにも手を打つための、全体の見取り図と考えると分かりやすいかもしれません。
「規制法」ではない点に注意
ここで誤解を避けたいのが、AI推進法は違反者を罰する「規制法」ではないという点です。罰則はほとんど設けられておらず、事業者には国の施策への協力が求められる、という性格が強いものになっています。よく比べられる欧州連合(EU)の「AI法」は、AIを危険度で分類し、違反に重い制裁金を科す包括的な規制です。日本のAI推進法は、まず活用を伸ばす「アクセル寄り」の設計といえるでしょう。ただし国は、重大な権利侵害などがあれば調査や指導を行えるため、何でも自由というわけではありません。
企業への影響
では、自社の経営に何が関わるのでしょうか。直ちに新しい義務が課されるわけではありませんが、国がAIの推進と適正利用を後押しする方向に舵を切った意味は小さくありません。今後はAI基本計画に沿って、補助や人材育成の支援、業種ごとの指針などが具体化していくとみられます。国の動きを「自社がAI活用を進める追い風」として捉え、情報を取りにいく姿勢が要になります。罰則がないからと無関心でいるより、早めに社内の活用と安全管理の体制を整えるほうが得策でしょう。
Topic世界が「ブレーキ」を語る中で、日本が選んだ「アクセル」
AIの法律というと、海外では「禁止」「罰金」といった規制の話が中心になりがちです。実際、欧州連合のAI法は違反企業へ高額の制裁金を定めています。これに対し日本のAI推進法は、罰則をほとんど置かず、まず研究開発と活用を伸ばすことに重心を置きました。同じ「AIの法律」でも、国によって向いている方向がこれほど違うのは興味深いところ。規制で守るか、推進で追いつくか。日本の立ち位置がよく表れた一本といえるでしょう。
AI推進法に関するよくある質問
- 「AI法」「AI新法」と呼ばれることもありますが、同じものですか?
- 同じ法律を指します。正式な名称が長いため、報道や実務では「AI法」「AI新法」「AI推進法」など複数の通称が使われています。内容はいずれも同じ一本の法律です。
- AIを使う一般企業も、AIを開発する企業も対象になりますか?
- 幅広い主体が関係します。この法律は国や自治体、研究機関、事業者など、AIを開発する側と活用する側の双方を視野に入れて役割を整理しており、特定の業種だけを対象にしたものではありません。
- この法律ができたことで、個人情報保護法や著作権法はなくなるのですか?
- なくなりません。AI推進法は国の基本的な方針や体制を定める法律で、個別の権利保護は従来どおり個人情報保護法や著作権法などが担います。これらに置き換わるものではない点に注意が必要です。