InfiniBand(インフィニバンド)とは

InfiniBandとは、多数のサーバーを、とても低い遅延と高い帯域でつなぐ高速ネットワークの規格です。大規模なAIの学習では、GPUを積んだサーバーを何十台、何百台と束ねて1つの巨大な計算機のように動かします。そのサーバー同士をつなぐ「高速な専用線」にあたるのがInfiniBandで、高性能計算やAIのデータセンターで広く使われてきました。

InfiniBandの仕組みと速さの理由

速さの鍵はRDMAという仕組みにあります。ふつうのネットワークは、データを送るたびにCPU(コンピューターの頭脳)が荷さばきに駆り出されます。RDMAはデータの受け渡しの途中にソフトウェアを挟まず、サーバーのメモリからメモリへ直接データを渡すので、CPUの負担と待ち時間をまとめて減らせるのが特長です。仕様を定める業界団体IBTAによると、端から端までの遅延の実測値は600ナノ秒。100万分の1秒にも満たない時間です。つなぎ方も、1本の通路を全員で取り合うのではなく、スイッチを介して相手同士を1対1の通り道でつなぐ方式をとっています。

NVLinkやイーサネットとは、どう使い分ける?

混同しやすいのが、同じ「つなぐ」技術との役割の違いです。NVLinkはGPU同士を直結する近距離のつなぎで、サーバー1台に8基のGPUを積んでつなぐ構成に加え、2024年3月にNVIDIAが発表したGB200 NVL72では、ラック(サーバー棚)1台に収めた72基のGPUまでNVLinkでつながり、1つの大きなGPUのように動きます。InfiniBandは、そうしたサーバーやラック同士を、データセンターの中でさらに広くつなぐネットワークです。GPUのすぐ近くはNVLink、その外はInfiniBandやイーサネットと整理すると分かりやすいでしょう。

オフィスのLANでおなじみのイーサネットも、AI向けの有力な選択肢です。NVIDIA自身、2024年3月18日にInfiniBand製品(Quantum-X800)とイーサネット製品(Spectrum-X800)を同時に発表し、前者を「AI専用の基盤」向け、後者を、複数の利用者が設備を分け合う生成AI向けのクラウドや大企業向けと位置づけました。2025年6月には業界団体Ultra Ethernet Consortiumが、AIと高性能計算に向けたイーサネットの仕様1.0を公開しています。InfiniBandだけが選択肢というわけではありません。

なぜAI基盤の土台になるのか

巨大なAIを学習させるには、多数のGPUサーバーを束ねて規模を広げていきます。このときサーバー間の通信が遅いと、計算を終えたGPUが次のデータを待つ「手待ち」だらけになり、高価なGPUが遊んでしまうのです。InfiniBandは低い遅延でこの手待ちを抑え、ばらばらのサーバー群を一体の計算機のように動かす土台になります。スパコンの性能ランキングTOP500の2026年6月版では、上位100システムのうち61がInfiniBandを使っています(各システムの構成欄を私たちが数えた値。IBTAによると2023年6月版では63)。一方で同じ上位100には、KDDIのGPUクラウド(98位)のように、NVIDIAのイーサネットでつないだAI向けの設備も入っています。

TopicNVIDIAは「計算チップ」だけでなく「配線」まで握った

NVIDIAが「InfiniBandの技術を開拓した」と紹介する会社が、Mellanox(メラノックス)です。NVIDIAは2019年3月11日、同社を企業価値にして約69億ドルで買収すると発表し、2020年4月27日に手続きを終えました(完了時の発表では取引額約70億ドル)。ChatGPTの一般公開(2022年11月)より2年以上前のことです。買収を発表した時点で両社は、米エネルギー省が運用する当時世界で最も速かった2台のスパコン、SierraとSummitを一緒に作った間柄でした。AIの計算を担うGPUと、GPU同士をつなぐ配線(InfiniBand)を、同じ会社が一貫してそろえる形になったわけです。

InfiniBandに関するよくある質問

InfiniBandの速さは、どのくらいですか?
NVIDIAが2024年3月に発表したQuantum-X800では、接続1本あたり毎秒800ギガビット(おおよそ毎秒100ギガバイト)です。IBTAが2023年の時点で出荷中と紹介していた世代(NDR)は毎秒400ギガビットで、その倍にあたります。
InfiniBandの規格は、誰が決めていますか?
1999年に設立された業界団体InfiniBand Trade Association(IBTA)が、仕様を定めて維持しています。同じIBTAは、イーサネットの上でRDMAを使えるようにするRoCE(RDMA over Converged Ethernet)という仕様も管理しています。

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