AI21 Labsとは

AI21 Labsとは、イスラエルで2017年に創業したAI企業です。独自の大規模言語モデル(LLM)「Jamba」で知られましたが、2026年5月には言語モデルを単体で売る事業をやめ、企業のAIエージェントを安く正確に動かすための仕組みへ、事業の軸足を移したと報じられています。米国以外の独立系の開発元が、どこで勝負し、どう方向を変えたのかを知る手がかりになる一社です。

研究者と起業家が立ち上げた、イスラエル発の開発元

AI21 Labsを立ち上げたのは、スタンフォード大学の名誉教授で、Googleの研究者も務めたヨアブ・ショハム氏、起業家のオリ・ゴシェン氏、そして自動運転技術の会社モービルアイを共同創業したアムノン・シャシュア氏の3人です。ChatGPTの一般公開(2022年11月)より5年ほど早く、言語を扱うAIの開発を始めていました。2023年8月には約1億5,500万ドルを調達し、企業価値は約14億ドルでした(同社発表・2023年8月時点)。このときの出資者には、GoogleやNVIDIAも名を連ねました。

代表作のJambaは、どんなモデル?

同社を象徴するのが、2024年3月に発表した基盤モデル「Jamba(ジャンバ)」です。今の生成AIで主流のTransformer(トランスフォーマー)に、長い文章を軽く扱えるMamba(マンバ)という別系統の方式を組み合わせた、ハイブリッド構造が持ち味でした。同社は発表時に「Mambaを土台にした、実用水準では世界初のモデル」とうたっています。一度に扱える文章量は約25万6千トークン。英語なら、分厚い本1冊をまるごと読み込めるくらいの量です(おおよその目安)。重みは公開され、企業が自社のサーバーの中で動かすこともできます。改良版は、2026年1月の版まで出ています。

2026年に、何が変わった?

イスラエルの経済紙カルカリストによると、AI21 Labsは2026年5月、従業員を約180人から約70人へ減らし、Jambaシリーズの開発を止めると発表しました。言語モデルを単体で売るのをやめ、2025年3月に発表したAIエージェント向けの基盤「Maestro(マエストロ)」に力を集めるとしています。いま同社の公式サイトが製品として掲げるのは、AIエージェントからのモデルの呼び出しを振り分けて、ムダな費用を減らす「Intelligent Gateway」や、小さな公開モデルを顧客の業務向けに追加で鍛える「Post-Training」などです。自前の巨大モデルで大手と正面から競う側から、安いモデルと高性能なモデルを組み合わせて、同じ品質をより安く出す手伝いをする側へ回った形です。

経営陣も変わりました。2026年7月には、シャシュア氏が会社と取締役会の両方を離れる意向を伝えたと報じられています。同社の公式サイトの紹介では、現在はゴシェン氏がCEO、ショハム氏が会長を務めています。

企業にとっての意味

もし社内でJambaを使っているなら、提供元が改良を止めたモデルであることを前提に、今後の乗り換え先も含めて点検しておくと安心です。AI21 Labsの方向転換は、AIモデルの提供元は、数年のうちに事業の形を大きく変えうることを示す例でもあります。特定の1社のモデルに業務を縛りつけず、別のモデルへ差し替えられる作りにしておくことが、調達の守りになるでしょう。

Topic創業者の一人は、自動運転の「目」をつくったモービルアイの共同創業者

AI21 Labsで会長を務めていたアムノン・シャシュア氏は、カメラの映像から周りの状況を読み取る画像認識技術で知られるMobileye(モービルアイ)の共同創業者でもあります。米インテルは2017年3月、そのモービルアイを株式価値で約153億ドルで買収すると発表し、同年8月に手続きを終えました。AI21 Labsが生まれたのと同じ年です。一人の研究者が同じ年に、自動運転の大型買収と、言語を扱うAIの新会社の立ち上げの両方にかかわっていたことになります。

AI21 Labsに関するよくある質問

AI21 Labsは、NVIDIAやNebiusに買収されたのですか?
いいえ。2026年9月時点で、買収は確認されていません。NVIDIAとの買収交渉の報道については、同社が2026年1月に「誤り」だと公式に否定しました。AIクラウド企業のNebius(ネビウス)とは交渉が報じられましたが、同年5月に結ばれたのは買収ではなく、AI21 LabsのAIエージェント基盤をNebiusのクラウドに組み込む事業上の提携だったと報じられています。
Jambaは日本語で使えますか?
公式ドキュメント(2026年9月時点)が挙げるJambaの対応言語は、英語・スペイン語・フランス語・ポルトガル語・イタリア語・オランダ語・ドイツ語・アラビア語・ヘブライ語の9つで、日本語は入っていません。日本語の文書を扱う業務なら、日本語への対応を明記したモデルを選ぶのが無難です。

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