ゴールベース規制とは
ゴールベース規制とは、規制する側が「達成すべき目標や成果」だけを定め、それをどう実現するかの具体的な手段は企業など規制される側に委ねる規制のやり方のことです。「結果さえ満たせば、やり方は任せる」という考え方で、手順を事細かに指定するルールベース規制とは対をなすアプローチになります。
英語表記:goal-based regulation(outcome-based regulation)
ルールベース規制との違い
たとえば職場の安全を「手すりは高さ何センチ、柵は何メートルごと」と細かく決めるのがルールベース。これに対しゴールベースは「働く人が転落しない状態を保つこと」とだけ定め、達成方法は各社に任せます。前者は分かりやすく予測しやすい反面、決まりを満たすだけの形だけの対応になりがち。後者は柔軟で創意工夫を引き出せる一方、「何をすれば合格か」の解釈に迷いが残るという長所と短所があります。技術の進歩が速く、正解の手順を固定しづらいAIの分野では、このゴールベースの考え方が相性のよい場面も多いでしょう。
AI規制での位置づけ
注意したいのは、よく聞くリスクベースアプローチとは別の軸の話だという点です。リスクベースは「リスクの高さに応じて規制の強さを変える」軸、ゴールベースは「手段を縛るか成果を縛るか」の軸で、両者は重ねて使えます。実際、EU AI法はリスクの高さで段階を分けるリスクベースを採用する。一方でイギリスは2023年のAI規制の白書で、特定の手順を法で固定せず、安全性や透明性といった原則(=目指す成果)を各業界の既存当局に守らせる、原則・成果ベースの道を選びました。これは罰則で縛るためというより、変化の速い技術に追いつける柔軟なルールを作るための工夫と理解するとよいでしょう。
Topic身近な「性能規定」もゴールベースの仲間
この考え方は、実は建物のルールづくりでもおなじみです。建築の世界には、部材ごとに「この材料をこの厚さで」と細かく指定する仕様規定と、「建物全体としてこの断熱性能を満たせばよい」と結果だけを求める性能規定があります。後者の性能規定はまさにゴールベースの発想で、設計者が断熱と空調のバランスを自由に工夫できる余地を生みます。規制と聞くと窮屈に感じがちですが、目標だけ示して手段を開く形は、むしろ現場の知恵を引き出す装置にもなりうるのです。
ゴールベース規制に関するよくある質問
- ゴールベース規制はいつからある考え方ですか?
- 1970年代の労働安全規制(英国のロベンス報告)などにさかのぼる古い発想です。技術の進歩が速く手順を固定しづらいAIの分野で、近年あらためて注目されています。
- ゴールベース規制は企業にとって楽なのですか?
- 手段の自由度は高いものの、何をすれば目標を満たすかを自分で判断し説明する責任が伴います。形だけの手順遵守では済まず、結果に対する説明力が問われます。