アノテーションとは

アノテーションとは、AIに学習させるために、データへ「これは何か」という正解の情報(ラベル)を付ける作業です。写真に「これは犬」と書き込んだり、文章に「これは苦情」と印を付けたりして、AIが学べる教材を用意します。日本語では「ラベル付け」とも呼ばれ、ChatGPTのような生成AIづくりでも欠かせない工程です。

どんな作業をするの?

正解つきのお手本から学ぶ教師あり学習では、その「正解」を人が用意します。画像なら、写真全体に名前を付ける、写っている物を四角い枠(バウンディングボックス)で囲む、輪郭に沿って塗り分ける、と段階があり、細かくなるほど1枚あたりの手間が増えます。文章なら内容の分類や人名・社名への印付け、音声なら書き起こしが代表例です。

なお、英語のannotationはもともと「注釈」という意味。Search Consoleのカスタムアノテーションのように、グラフに付けるメモを指す場合もありますが、こちらはAIの教材づくりとは別物です。

生成AIの時代に、何が変わった?

生成AIでは、作業の中身が「名前を付ける」から「お手本を書く・答えを比べる」へ広がりました。ChatGPTより先に同じ方法で作られた、OpenAIのInstructGPT(2022年発表)では、選考テストで選んだ約40人の作業者が、約1万3千件の指示に望ましい答えのお手本を書き、3万3千件の指示についてはAIが出した複数の答えに順位を付けています。この順位を学ばせる手法がRLHFです。

効果は大きく、OpenAIのAPIに寄せられた実際の指示で比べると、この調整をした13億パラメータの版が、調整していない1,750億パラメータのGPT-3より人に好まれました。AIの規模を表す数で100分の1以下の差を、人が付けた正解の質がひっくり返した形といえるでしょう。ただし正解は一つに決まるとは限りません。同じ論文では、データづくりを担った作業者どうしでも、どちらの答えが良いかの判断が一致したのは約73%でした。4回に1回ほどは意見が割れる計算になるため、作業の手引きを細かく用意し、複数の人の判断をまとめる工夫が欠かせません。

AIがアノテーションを手伝う

最近は、作業そのものにもAIが入っています。MetaのSegment Anything(2023年発表)は、学習用データを集める段階で、AIが示した塗り分けを人が直す方式を取り入れました。AIが賢くなるにつれて、1つの対象を塗り分ける時間は平均34秒から14秒へ。最後の段階では、集めた約11億の塗り分けの99.1%をAIが全自動で作っています。人の役割が「ゼロから付ける」から「AIの下書きを確かめて直す」へ移っていった例です。

Topic「私はロボットではありません」の先で、教材づくりを手伝っていた

ウェブサイトでチェックを入れたり、ゆがんだ文字を読んだり、画像を選んだりする認証。Googleが無料で提供するreCAPTCHAです。2018年1月時点のGoogleの公式サイトは、この認証が解かれるたびに、その人の手間が文字のデジタル化や画像へのアノテーション、機械学習用のデータづくりに役立っていると説明していました。たとえば、ストリートビューの写真に写った文字を認証の問題にし、人が読み取った結果をGoogleマップをより正確にするために使っていたそうです。世界中で毎日何百万回と解かれる認証が、知らないうちにAIの教材づくりを手伝っていたわけです。

アノテーションに関するよくある質問

アノテーションとラベルは同じ意味ですか?
近い関係ですが、指すものが違います。ラベルはデータに添えた「正解」そのもの、アノテーションはそれを付ける「作業」です。名前を書き添えるだけでなく、画像の中で物を囲んだ枠の位置のように、名前以外の情報を付けることもアノテーションに含まれます。
AIが自動で付けられるなら、人の作業はいらなくなりますか?
すぐにはなくなりません。MetaのSegment Anythingは塗り分けのほとんどをAIに作らせましたが、その品質を確かめるために、専門の作業者が約500枚分(約5万個)のAIの塗り分けを直し、直す前と後の重なりを比べています。9割以上重なっていたのは94%でした。全自動に任せてよいかを決めるにも、人が付けた「確かめ用の正解」が要るわけです。
1件のアノテーションには、どのくらい時間がかかりますか?
作業の細かさで大きく違います。Segment Anythingの論文によると、AIの手助けを受けて1つの物を輪郭どおりに塗り分けるのに平均14秒。これは代表的な画像データ集(COCO)の塗り分けより6.5倍速く、物の端の点を指定して四角で囲む方式よりは2倍遅い水準です。単純に計算すると、従来の塗り分けは1つ1分半ほど、四角で囲むだけなら7秒ほど。写真1枚に物が何十個も写っていれば、その分だけ時間は積み上がります。

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