スマートファクトリーとは

スマートファクトリーとは、工場の設備や工程から集めたデータをつなぎ、注文や現場の変化にすばやく応えられるようにした工場のことです。日本では「スマート工場」とも呼ばれ、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2024年6月の発表で、工場の中と外のデータを見える化してつなぎ、生産の最適化だけで終わらせずに、会社の競争力を高める工場と説明しています。米国の国立標準技術研究所(NIST)が2014年の計画書で描いたのも、工場の中だけでなく、取引先とのつながりや顧客の求めの変化にまで、その場で応えるスマートな製造の仕組みでした。

スマートファクトリーの仕組みを示す概念図:設備・センサーから工程管理・AI分析を経て経営判断へデータがつながる流れ

何がつながると「スマート」になるの?

NISTが2014年2月にまとめた研究計画で、こうした製造の仕組みを支える要素として挙げたのは、次の5つです。

  • ネットワークにつながったセンサーで機械の状態を測り、動きを制御する仕組み
  • 故障の前ぶれをつかみ、診断や保守につなげる仕組み(予測保全)
  • 工場の中で使う無線通信
  • 機械を動かす制御システムを、サイバー攻撃から守る仕組み
  • メーカーの違う機器どうしが、情報をやりとりできること

仕組みに求める働きとして計画書が挙げるのは、需要に合わせて生産ラインや取引先とのつながりを素早く組み替えられること、先の読めない状況や異常にうまく対処できること、過去の経験から学んで改善を続けられることの3つ。集めたデータから故障の前ぶれを見つけたり、検査の画像から不良品を見分けたりする分析には、AIが使われることもあります(AI外観検査など)。

工場の自動化と、何が違う?

自動化とは、人がしていた作業を機械に任せること。スマートファクトリーで問われるのは、その先にある機械どうし、工程どうしの「つながり」です。NISTの計画書は2014年の時点の多くの工場について、個々の機械の細かな診断は自動で行われていても、ラインや工場全体の異常の診断や予兆の判断は、記録に残らない人のその場の対応か、大まかな自動の仕組みに頼っていると指摘しました。ロボットや工作機械をネットワークでつないで効率よく動かす方法や道具も足りず、注文の変化に応えようとすると、費用も時間もかさむ状態でした。

もう1つの違いは、範囲が工場の外まで広がることです。冒頭のNISTの説明は、部品や材料を届ける取引先とのつながり(サプライチェーン)と、顧客の求めの変化への対応までを含めています。工場や設備の状態をデータの上に写し取るデジタルツインは、こうした組み替えの影響を前もって試すための道具の1つです。

導入の前に、何を決めておくべき?

NEDOは2024年6月28日に「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」を公開し、2025年5月13日には経済産業省などと共同でまとめた第2版を出しました。出発点に置いているのは技術ではなく、会社が抱える経営や業務の課題を特定することです。そのうえでデジタルの道具を当てはめる、企画と構想の段階に重点を置いています。

指針の前提は、目指すゴールが会社ごとに違うことです。会社や事業の規模、業界、サプライチェーンの中の位置、経営の方針によって変わるため、決まった答えは示しません。代わりに、自社に合う道筋を描くための考え方と目指す姿を「7つのリファレンス」としてまとめ、スマート化を率いる管理職や経営層、各部門の現場のリーダーが手引きとして使うことを想定しています。

機器やシステムを選ぶ段階では、メーカーの違う機械どうしがつながるかも確かめておきたいところでしょう。NISTは2014年の計画書で、共通のデータの形、通信の手順、つなぎ口の規格、セキュリティの手順が足りないことを、普及を妨げる壁に挙げていました。セキュリティについては、通信の暗号化や機器の認証といった一般的な対策が、スマートな製造の仕組みにはあまり使われていないと書いています。理由として挙げたのは、機械の動きや処理の性能に悪い影響が出るのを心配して、導入をためらうことでした。工場などの制御システムを狙い撃ちにする攻撃(例としてStuxnet)が現れ、脅威の様子は大きく変わった、というのが計画書の見立てです。

では、新しい通信の技術はどうでしょうか。NEDOは2024年6月の発表で、自らの研究開発事業について、ローカル5G(企業などが自分の敷地の中に作る5Gの通信網)の遅れの少なさを生かし、離れた場所から機械をその場で制御するといった使い方は、当初は期待されていたものの、実用の段階に達していないと書いています。

Topic「スマートファクトリー」の実験工場を率いた教授は、2014年に「本物は早くても10年後」と見ていた

ドイツのカイザースラウテルンにある研究団体「SmartFactory-KL」は、2005年にデトレフ・ツュールケ(Detlef Zühlke)教授が立ち上げました。2014年にドイツの産業見本市ハノーバーメッセで展示したのは、10社の協力を得て、別々の会社が決められた規格とつなぎ口に沿って作った5つの装置を組み合わせた、1本の生産ラインです。ところが同じ年の9月、ドイツのAIの研究機関DFKIの中にある実験工場で開いた催しで、教授は「最初の要素は数年のうちに生産現場で見られるだろうが、本当にスマートな工場が現実になるのは、早くても10年後」と見積もっていました。

スマートファクトリーに関するよくある質問

中小の工場でも取り組めますか?
取り組めますが、大きな会社と同じ形をなぞる必要はありません。米国のNISTは2014年の計画書で、各社がばらばらに作った独自の仕組みはほかの会社では使えないことが多く、中小企業には費用の面で手が届きにくいと指摘していました。日本のNEDOが2025年5月に出した指針の第2版には、検討の手順をたどりながら、施策の企画まで落とし込めるワークシートが加わっています。
インダストリー4.0とは、どういう関係ですか?
インダストリー4.0は、ドイツ発の「第4次産業革命」の呼び名です。ドイツ人工知能研究センター(DFKI)は2014年の発表で、これを最新の情報技術と昔ながらの工業の工程が融け合うことと説明しています。ドイツでスマートファクトリーを研究する団体SmartFactory-KLは、自らをインダストリー4.0の研究開発の場と位置づけ、この呼び名が公式に打ち出されたのは2011年だと紹介しています。

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