North Small Translate(ノース・スモール・トランスレート)とは
North Small Translateとは、Cohereが2026年9月10日(日本時間9月11日)に公開した、文章の多言語翻訳に特化したAIモデルです。日本語を含む50以上の言語と地域変種を扱います。試すなら無料のAPI、研究や非商用なら公開された重み、本番の商用利用なら有償ライセンスと、使い方によって入口が分かれます。翻訳精度だけでなく、用語、ライセンス、運用費を含めて選ぶモデルです。

正式名称:North Small Translate 1.0
提供者:Cohere
どのような翻訳モデル?
Cohereの公式ドキュメントによると、英語と50以上の言語・地域変種の間を翻訳でき、日本語は優先して扱う第1グループに入っています(ほかはアラビア語、ドイツ語、フランス語、韓国語、ロシア語、ウクライナ語)。入力と出力はそれぞれ最大16Kトークン。トークンとは、AIが文章を処理するための文字や単語のまとまりです。長文をひと続きで渡せる範囲の目安になります。
中身は、全体で218B(2,180億)あるパラメータのうち、1トークンを処理するたびに25B(250億)だけを動かすMoEという構造です。名前に「Small」とありますが、公式が示す推奨機材はデータセンター向けGPUのH100を2枚、またはB200を1枚。名前だけで、手元のパソコンで動く軽いモデルだと判断しないほうが安全です。
ただし、対応言語であることと、自社の文書を期待どおりに翻訳できることは別です。商品名、契約用語、業界略語、日付と数値が保たれるかを、実際に使う文書の小さな評価セットで先に確かめる必要があるでしょう。
試すとき、本番で使うときの入口は?
試すだけなら、CohereのChat V2 APIから無料で呼び出せます。ただし無料なのは利用上限に達するまでで、評価用のキーは月1,000回までです。本番で使う方法として公式ドキュメントが案内しているのは、Cohereの「Model Vault」を通じた商用ライセンス。Model Vaultは、Cohereが運用し、他社と共有しない専用の実行環境です。
重みはHugging Faceからダウンロードできるものの、ライセンスはCC BY-NC 4.0で、研究と非商用の利用に限られます。重みを入手できても、自社のサーバーで商用に使ってよいとは限りません。なお発表記事では、共同開発した言語技術の会社RWSの製品「Language Weaver」から使う道も示されました。
汎用の対話AIとどう使い分ける?
汎用の対話AIは、翻訳に加えて要約、質問応答、企画など幅広い指示を1つの対話で扱います。North Small Translateは翻訳に対象を絞ったモデル。ただし、用途が専門化されていることだけで、自社の翻訳が必ず良くなるとは判断できません。汎用AIも同じ原文と正解訳で比べます。
もう一つの比較相手が、翻訳専用のサービス(翻訳プラットフォーム)です。Cohereの公式FAQは、プラットフォームはモデルに共同作業、文書の管理、案件の進行管理、書式の維持といった機能を足したものだと整理し、そうした業務の機能がモデルを直接扱う自由より大事なら、プラットフォームが向くとしています。翻訳チームの作業を回したいのか、自社のシステムに翻訳を組み込みたいのかで、選ぶべきものは変わってくるでしょう。
導入前に何を比べる?
最初に対象言語を絞り、原文と正解訳、守るべき用語、翻訳禁止語を一組にします。比較項目は、訳文の正確さ、用語の統一、数値の保持、人が直した時間、1件あたりの総費用。ベンダーの共通テストの順位だけでは、社内固有の表現を扱えるかは分かりません。
機密文書を扱うなら、APIとModel Vaultのどちらでも、入力データの場所、ログの保存、アクセス権、削除方法を確認します。翻訳後の人の承認を外せるかどうかは、モデル名ではなく、誤訳が与える影響から決めます。公開前の対外文書や、金額・権利・安全に関わる文書は、人の確認を残すのが安全でしょう。
Topic成績表の採点役も、別のAIだった
Cohereは発表記事で、翻訳の国際評価WMT26にもとづく比較で83.6点を取り、DeepL NextGen(81.37点)や、Googleの翻訳サービス(68.20点)を上回ったと説明しています。ただし、この点数を付けたのは人ではなく、OpenAIのGPT-5.6 Sol。AIに採点役を任せるLLM-as-a-Judgeという方法です。目盛りは、80〜100点が「完璧、または軽微な誤りのみ」、60〜80点が「良いが大きな誤りを含む」。点数を比べるときは、誰がどの目盛りで採点したかまで確かめると、数字の読み違いを防げます。
North Small Translateに関するよくある質問
- 日本語と英語の翻訳に使えますか?
- はい。日本語は公式ドキュメントの優先対応言語に含まれています。ただし、業界用語や商品名が正しく保たれるかは別の問題なので、自社文書の正解訳と比べてください。
- 翻訳品質の確認は誰に依頼すればよいですか?
- 対象言語を読めることに加え、その業界の用語と文書の目的を理解する人に依頼します。流暢さだけでなく、金額、日付、権利義務、商品名、否定表現が原文と合っているかを確認できる担当者が適任です。
- 契約書のような長い文書も、まとめて翻訳できますか?
- 1回に渡せるのは入力・出力ともに最大16Kトークンです。Cohereは、本の2章分を1回で訳させる社内評価で48.9点(Google翻訳は21.3点)だったと説明していますが、これは自社による評価です。長い文書は、章ごとに区切って訳した場合とも比べ、抜けや訳語の揺れがないかを確かめてください。