第五世代コンピュータとは
第五世代コンピュータとは、1982年に日本の通商産業省(通産省)が始めた、人工知能や並列処理を備えた次世代コンピュータを目指した国家プロジェクトです。約10年・総額570億円弱を投じた、当時としては野心的な国家規模の挑戦でした。
英語表記:Fifth Generation Computer Systems
論理プログラミングに賭けた挑戦
このプロジェクトが狙ったのは、人間のように「推論」を高速にこなすコンピュータでした。計算をこなすだけの機械から、知識を蓄えて筋道を立てて考える機械へ。その実現手段として選ばれたのが、論理プログラミングという考え方で、日本生まれの言語であるProlog(プロログ)の流れをくむ技術が中心に据えられました。推進役には、ICOT(新世代コンピュータ技術開発機構)という専門の研究機関が置かれ、国内のコンピュータ各社が結集しています。
商業的には失敗、それでも時代を先取りしていた
結果から言えば、第五世代コンピュータは商業的には成功しませんでした。専用に作り込んだ高価なハードウェアが、その後に普及した安価で汎用的なコンピュータに性能で追い抜かれてしまったため。パソコンの画面操作やインターネットの広がりを読みきれなかった面もあります。では、この挑戦はまるごと無駄だったのでしょうか。そうとも言い切れません。ここで掲げた複数の処理を同時に走らせる「並列処理」の発想は、2000年代以降のマルチコア化の時代に再び脚光を浴びました。失敗と切り捨てるには惜しい、時代を先取りしすぎた挑戦だったといえるでしょう。
Topic日本の計画が世界を競争へ駆り立てた
第五世代コンピュータの構想は、海外に強い危機感を呼び起こしました。日本に主導権を握られてはならないと、アメリカはDARPA(国防高等研究計画局)の「戦略コンピューティング計画」を、ヨーロッパは「ESPRIT(エスプリ)」という共同研究を、相次いで立ち上げます。一国の国家プロジェクトが、各国を次世代コンピュータの開発競争へ引きずり込んだわけです。技術の世界にも、こうした国どうしの意地の張り合いがありました。
第五世代コンピュータに関するよくある質問
- なぜ「第五世代」と呼ぶのですか?
- コンピュータの部品の進歩を、真空管・トランジスタ・IC・LSIと第1〜第4世代に数え、その次という意味で「第五世代」と名づけました。ただし狙いは部品ではなく、推論や知識処理という働きの面での飛躍にありました。
- 第五世代コンピュータは、今の生成AIブームと関係がありますか?
- 直接の連続ではありません。1980年代のこの試みは記号や論理を重視する方向でしたが、現在のAIは大量のデータから学ぶ機械学習が中心です。当時の並列処理の発想は、のちのマルチコア時代に通じる先見性がありました。