ELIZA(イライザ)とは

ELIZAとは、1966年に論文で発表された対話プログラムで、一般に世界初のチャットボットとされるものです。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のジョセフ・ワイゼンバウム氏が作り、心理カウンセラーのような口ぶりで人と会話しました。ChatGPTの一般公開(2022年11月)より半世紀以上も前に、人と話すプログラムはすでに動いていたことを示す、歴史的な存在です。

どうやって会話していたの?

ELIZAは、言葉の意味を理解していたわけではありません。入力された文から、あらかじめ決めたキーワードを探し、文を分解して、決まった型に組み替えて返すだけ。論文の例では、「あなたはとても役に立つ」と打つと、「あなた」と「私」を入れ替えて型に当てはめ、「なぜ私がとても役に立つと思うのですか」と返します(原文は英語)。

どんな言葉にどう返すかは、プログラム本体とは別の「台本(スクリプト)」に書かれていました。有名な心理カウンセラー役も、その台本の一つです。台本に書かれた型の外には答えられない点が、大量の文章から言葉のつながりを学んで文章を組み立てる今の大規模言語モデルとの大きな違いです。

作者はなぜ、AIに警鐘を鳴らす側に回ったの?

きっかけの一つが、作者自身の秘書の反応でした。ワイゼンバウム氏によると、開発の様子を長く見ていて、相手が機械だと分かっていたはずの秘書が、数文を打っただけで「部屋から出ていただけますか」と頼んだといいます。同氏はこれを「ごく短い時間、比較的単純なプログラムに触れるだけで、ごく普通の人に妄想のような強い思い込みが生じうる」証拠と受け止め、1976年の著書『Computer Power and Human Reason』でコンピュータへの過信に警鐘を鳴らしました。人が単純な仕組みにも人間らしさを読み取ってしまうこの傾向は、ELIZA効果と呼ばれています。

ただ、この秘書の名前は記録に残っていません。英バーミンガム大学の研究者がMITの資料室で書簡や事務記録を探した経緯を2024年に公表しましたが、名前は見つかっていません。コンピュータの歴史で重要な役割を果たした利用者の声は、いまも作者の側からしか伝わっていないのです。

Topic2025年のチューリングテストで、ELIZAが人間と間違われた意外な理由

米カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者が2025年3月に公開した論文では、会話の相手が人間かAIかを5分で見抜く実験(チューリングテスト)に、ELIZAも参加しました。人らしく振る舞うよう指示したGPT-4.5は73%の確率で人間と判定されましたが、ELIZAは23%。人物像を与えず最小限の指示だけにしたGPT-4oの21%とほぼ並びました。論文は、ELIZAを人間だと選んだ人の多くが「AIらしくない」ことを理由にしていたと分析し、例として「皮肉っぽかった」「AIならこんなに失礼じゃないはず」を挙げています。約60年前の単純さが、いまの人が思い描く「AIらしさ」から外れていたことで、かえって人間らしく見えたわけです。

ELIZAに関するよくある質問

ELIZAという名前には、どんな意味がありますか?
1966年の論文によると、戯曲『ピグマリオン』で話し方を教え込まれるイライザにちなんだ名前です。利用者が少しずつ改良していけること、つまり「先生」役によって言葉の能力を高め続けられることを強調するために選んだ、と作者は書いています。そのうえで、ピグマリオンのイライザのようにもっと洗練されて見せることはできても、「見かけと実際の関係は劇作家の領分にとどまる」と書き添えました。上手に話せることと中身が伴うことは別だ、という注意書きが、名前の説明にすでに入っていたわけです。
ELIZAは、今でも動かせますか?
動かせます。2025年1月に研究者らが公開した論文によると、MITに残るワイゼンバウム氏の資料から、有名な心理カウンセラー役の台本の初期版を含む当時のプログラムの印刷物が見つかりました。研究者らは、当時の大型計算機IBM 7094を再現したソフトの上で、この元祖ELIZAを再び動かすことに成功しています。一式はオープンソースで公開されており、macOSやLinuxなどUnix系のOSを使っていれば誰でも試せます。

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