Chain-of-Thought(チェインオブソート)とは
Chain-of-Thoughtとは、AIに答えだけをいきなり出させるのではなく、答えにたどり着くまでの考える筋道を順を追って示させる手法のことです。日本語では「思考の連鎖」とも呼ばれ、頭文字をとってCoTと略されます。複雑な問題ほど正答率が上がりやすいことで知られています。
Chain-of-Thoughtの仕組み
やり方はとてもシンプルです。AIへの指示(プロンプト)の中で「順を追って考えてみましょう」と促したり、途中の考え方を書いたお手本をいくつか見せたりします。するとAIは結論を急がず、途中の計算や判断を一つずつ言葉にしながら答えへ近づいていく。人が筆算の途中式を書くのと似た発想だと考えるとわかりやすいでしょう。
この手法は、ChatGPTの一般公開(2022年11月)より前の2022年1月に、Googleの研究チームが発表したものです。算数の文章題のように手順の多い問いで、精度が大きく上がると報告されました。ただし効果が出たのは、規模を示すパラメータ数がおよそ1,000億の大きなモデルだけでした。小さなモデルは筋の通らない途中式を書き、かえって正答率を落としています。お手本を見せず一言添えるだけでも効くことは、同じ年の5月に東京大学とGoogleの研究者が示しました。
いまは推論モデルが内部で行う
登場した当初のChain-of-Thoughtは、利用者が自分でプロンプトを工夫して引き出す技でした。流れが変わったのが、2024年に登場したo1のような「推論モデル」です。これらのモデルは、答える前に考える筋道を内部で自動的に組み立てるようになりました。利用者が「順を追って」と頼む必要もありません。OpenAIの開発者向けガイドは、推論モデルにそう促すと、かえって妨げになる場合があるとしています。
ただし、こうした推論モデルは内部の思考をそのまま見せず、要約だけを返す設計になっている場合もあります。「途中の考えをどこまで見せるか」は、サービスごとに違うものだと捉えておくとよいでしょう。
ビジネスでの使われ方
経営の現場では、答えの正しさだけでなく「なぜそうなるのか」を確かめたい場面が少なくありません。Chain-of-Thoughtには、AIに判断の根拠を順序立てて説明させ、人がその筋道を検証しやすくする効果が期待できます。たとえば見積もりの計算、条件が入り組んだ問い合わせへの回答、複数案の比較といった作業で頼りになるでしょう。
ただし、示された筋道が、AIが実際にたどった判断そのものとは限りません。Anthropicが2025年4月に公表した実験では、答えのヒントをこっそり渡されて実際に使ったのに、思考の過程でそのヒントに触れたのは平均でClaude 3.7 Sonnetが25%、DeepSeek R1が39%でした。筋道は検証の手がかりであって、正しさの保証ではないと捉えておきましょう。
一方で、考える手順を踏むぶん、回答までの時間や費用は増えがちです。すべての作業に使うのではなく、間違いが許されない複雑な判断にしぼって使うと、効果と費用のバランスをとりやすくなります。
Topic「深呼吸して」が一番効いた実験
Chain-of-Thoughtに関するよくある質問
- 普通に「お手本」を見せる指示と、何が違うのですか?
- 普通のお手本(Few-shotプロンプティング)は、問題と答えの組だけを見せます。Chain-of-Thoughtは、そのお手本に答えまでの途中の考え方も書き添える点が違います。Googleの原論文では、この違いだけで、5,400億パラメータのモデルの算数の文章題の正答率が17.9%から56.9%に上がりました。
- 簡単な質問にも使ったほうがよいですか?
- 必ずしも効きません。原論文では、一度の計算で解ける簡単な問題だと、改善はごくわずかか、かえって下がる場合もありました。手間と費用をかける価値があるのは、手順を重ねないと解けない問いです。