重大インシデント報告とは

重大インシデント報告とは、AIが原因で死亡や重大な被害などの深刻な事故が起きたとき、提供者が当局へ届け出る義務のことです。EUのAI規制(EU AI法)の第73条が、高リスクAIの提供者に課しています。

英語表記:Reporting of serious incidents(EU AI法 第73条)

「重大インシデント」とは何を指すか

ここでいう重大インシデントは、IT障害一般のことではありません。人の死亡や深刻な健康被害、重要インフラの重大な機能停止、基本的権利の侵害、財産や環境への重大な損害など、影響の大きい事故に限られます。報告先は、その事故が起きた加盟国の市場監視当局です。

被害が重いほど、報告までの時間が短い

特徴的なのは、報告期限が一律でない点。原則は事故を知ってから15日以内ですが、死亡(疑いを含む)は10日以内、広範な侵害や特に重大なものは2日以内と定められています。被害が重いほど時計の針が速く回る、と捉えると分かりやすいでしょう。

AIインシデントデータベースとは別物

似た言葉にAIインシデントデータベースがありますが、これは過去の事例を集めた参照用の記録集です。重大インシデント報告は、法律で定められた当局への届け出義務であり、記録集に載せることとは違います。EU市場に高リスクAIを出す企業は、事故発生から短い期限で動けるよう、社内の対応プロセスをあらかじめ決めておくこと。誰が・いつ・どこへ報告するかを明確にしておくと、いざというとき慌てずにすみます。

Topicなぜ期限が「2日・10日・15日」と刻まれているのか

報告期限が被害の重さで段階分けされているのは、深刻な事態ほど社会への波及が速いからです。死亡や広範な被害は、放置すれば被害が連鎖しかねません。だからこそ通常より短い時計が設定され、当局が素早く動けるようにした設計。

重大インシデント報告に関するよくある質問

報告するのは誰の義務ですか?
原則は提供者です。ただし提供者がAIとの因果関係を確認できない場合などは、使う側(デプロイヤー)が報告の責任を負うことがあります。
報告を怠るとどうなりますか?
EUのAI規制は違反に制裁金を科す枠組みを持つため、報告義務を怠れば罰則の対象になりえます。対応の遅れは社会的な信頼の毀損にも直結します。
日本企業にも関係しますか?
EU市場に高リスクAIを提供する場合は対象です。国内のみの利用でも、重大な事故が起きたときに迅速に対応・報告できる体制づくりは信頼の確保に役立ちます。

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