プロダクションシステムとは
プロダクションシステムとは、「もし〜ならば〜せよ」という形のルールをたくさん積み重ねて、コンピュータに判断や推論をさせる古典的なAIの仕組みのことです。人間の専門家が持つ知識を一つひとつルールとして書き写し、それを機械にたどらせる「ルールベースAI」の代表的な設計にあたります。製造業でいう「生産システム(生産ライン)」とは名前が似ているだけの別物なので、混同しないでください。
英語表記:production system
三つの部品でできている
この仕組みは、大きく三つの部品から成り立ちます。一つ目はルールの集まりで、「熱があり、せきが出るなら、風邪を疑え」のような条件と動作の組です。二つ目は作業記憶と呼ばれる、いま分かっている事実を一時的に置いておくメモ帳。三つ目が、どのルールを実行するか選ぶ推論エンジンになります。条件に合うルールを次々と発火させ、新しい事実をメモ帳に書き加えながら結論へ近づいていく。この繰り返しが、専門家の頭の中にある「判断の連鎖」をまねているわけです。
いまのAIとは対照的な発想
大量のデータから自分でパターンを学ぶ今の機械学習とは対照的に、プロダクションシステムは人間が知識をすべてルールとして書き出す方式です。1970〜80年代に広まったエキスパートシステムの土台となり、SOARやACT-Rといった「人の思考をまねる研究」にも受け継がれました。ルールが数千を超えると全体の管理が難しくなる弱点はあるものの、判断の理由を一行ずつたどれる分かりやすさは、いまも見直されています。
Topicルールの塊が、年数十億円を浮かせた話
プロダクションシステムは、ただの机上の理論ではありませんでした。1980年、コンピュータ大手DEC社が、注文に合わせて機械の構成を自動で組み立てる「XCON(R1)」という仕組みを導入します。中身は約2,500本のif-thenルールの塊。これが人手の設定ミスを減らし、1986年には年間およそ2,500万ドル(当時のレートでざっと数十億円規模)を節約したと見積もられました。地味なルールの積み重ねが、巨大企業の利益を動かした好例といえるでしょう。
プロダクションシステムに関するよくある質問
- プロダクションシステムは製造業の「生産システム」と同じ意味ですか?
- 違います。AIのプロダクションシステムは「もし〜ならば」というルールで推論する仕組みのことで、工場の生産ラインとは無関係です。英語のproduction systemを直訳した呼び名のため、日本語では紛らわしくなっています。
- プロダクションシステムは今でも使われていますか?
- 判断の理由を一行ずつ追える分野では今も使われています。業務ルールの自動判定や審査の仕組みなどが例です。一方、あいまいなデータから自分で学ぶ処理は、現在は機械学習が主流になっています。