意思決定インテリジェンスとは
意思決定インテリジェンスとは、データ分析やAIに、人の意思決定の理論や経営の知見を組み合わせ、「より良い決断を下す」こと自体を一つの技術として設計・改善する考え方です。英語ではDecision Intelligence、略してDIと呼ばれます。データから答えを出すだけでなく、その答えを「実際の行動」へつなげるところまでを射程に入れているのが特徴でしょう。
意思決定インテリジェンスの考え方
意思決定インテリジェンスは、単一の技術ではありません。機械学習などのAI(情報を出す部分)、人の判断のクセ(思い込みやバイアス)を扱う行動科学、選択肢を評価する経営科学といった複数の分野を束ねた、いわば「決め方の工学」です。AIが得意なのは「このデータから何が言えるか」を示すこと。ここに「では、どの行動をとれば結果がどう変わるか」という視点を足したものだと考えると分かりやすいでしょう。
BI(ビジネスインテリジェンス)との違い
もっとも混同されやすいのが、BI(ビジネスインテリジェンス)との違いです。BIはデータを見やすく可視化して人に渡し、そこで役目を終えます。「何が起きたか」を映し出すところまでが守備範囲です。これに対し意思決定インテリジェンスは、「だから次に何をすべきか」という推奨や予測まで踏み込み、決断と結果を結びつけるところに重心があります。情報と行動の間に空く溝を埋める、と表現されることもあります。
AIそのものとの関係でいえば、AIは意思決定インテリジェンスを支える部品の一つにすぎません。そこに人の思い込みへの配慮や、結果を見て改善し続ける仕組みを加え、AIを責任を持って意思決定に組み込むための枠組みとして整えたものといえます。
ビジネスでの位置づけ
需要計画や価格設定、人員配置といった現場の判断から、経営レベルの戦略まで、あらゆる階層の意思決定を底上げする分野として注目されています。調査会社のガートナーは2021年に、これを翌2022年の重要な技術トレンドの一つに選びました。当時の予測では「2023年までに大企業の3分の1超でアナリストが意思決定インテリジェンスを実践するようになる」とされ、ここ数年で存在感を増しています。経営の現場で「データはあるのに決めきれない」という悩みに、橋を架ける考え方だといえるでしょう。
Topic「意思決定の科学者」という役職を作った会社
意思決定インテリジェンスという言葉を広めたのはGoogleです。同社は2018年ごろ、社内の意思決定の進め方を「Decision Intelligence」と名づけ直し、さらに「チーフ・ディシジョン・サイエンティスト」という耳慣れない役職、いわば意思決定を専門に担う幹部ポストを新設しました。初代に就いた統計学者のキャシー・コジルコフは、在籍した約10年で2万人を超える社員に「良い決断の下し方」を指導し、500を超えるプロジェクトに関わったと公言しています。AI時代に本当に希少なのは、データを出す人ではなく、それをまっとうな決断に変えられる人なのかもしれません。
意思決定インテリジェンスに関するよくある質問
- 意思決定インテリジェンスとBI(ビジネスインテリジェンス)は何が違いますか?
- BIはデータを可視化して人に渡すところで役目を終えます。意思決定インテリジェンスは、その先の「だから何をすべきか」という推奨や予測まで踏み込み、決断と結果を結びつける点が違います。
- 意思決定インテリジェンスはAIと同じものですか?
- 同じではありません。AIや機械学習は意思決定インテリジェンスを支える部品の一つで、そこに人の思い込みへの配慮や、結果を見て改善する仕組みを加え、AIを責任を持って意思決定に組み込む枠組みとして整えたものです。
- 意思決定インテリジェンスという言葉は誰が広めたのですか?
- Googleが2018年ごろに社内の意思決定の進め方をDecision Intelligenceと名づけ、統計学者キャシー・コジルコフが発信して広まりました。その後、調査会社ガートナーが2021年に重要な技術トレンドの一つに選んでいます。