ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントとは、社員一人ひとりや組織に散らばった知識・ノウハウを集めて共有し、組織全体の力に変える経営手法のことです。「あの人しか知らない」状態をなくし、会社の知恵を誰もが使える形にしておく取り組みを指します。

英語表記:Knowledge management (KM)

難所は「言葉にしにくい知識」をどう共有するか

知識には2種類あります。マニュアルや文書のように言葉で表せる「形式知」と、熟練者の勘やコツのように言葉にしにくい「暗黙知」です。形式知はまとめて共有しやすい一方、暗黙知は本人の頭の中にあり、引き出して共有するのが難しい。この暗黙知をいかに組織の財産に変えるかが、ナレッジマネジメントの長年の課題でした。

生成AI(RAG)が、長年の難題を現実的にした

いまナレッジマネジメントが再び注目される理由は、生成AIです。とくにRAG(社内文書を生成AIにつなぎ、質問するだけで必要な知識を引き出す仕組み)によって、「どこに書いてあるか分からない」社内の知識を、聞くだけで取り出せるようになりました。議事録や問い合わせ履歴をAIが要約して文書化を助けたり、熟練者へのインタビューから暗黙知を引き出したりする試みも進んでいます。知識を集めて検索するという積年の難題に、現実的な道具が手に入ったといえるでしょう。

経営にとっては「知識が人とともに去る」リスクへの備え

経営の観点では、退職や異動でベテランの知識が会社から失われるリスクへの備えになります。属人化を解き、新人教育にかかる時間を縮める効果も期待できるでしょう。仕組み化のハードルが下がったいまこそ、自社の知識をどう残し・活かすかを考える好機。

Topic「暗黙知」を世界に広めたのは、実は日本発の理論

ナレッジマネジメントの中核にある「暗黙知/形式知」や、知識が生まれる流れを説いたSECIモデルは、日本発の理論です。一橋大学の野中郁次郎と竹内弘高が、1995年の著書『The Knowledge-Creating Company(知識創造企業)』で世界に広めました。日本企業の強さを「現場の言葉にしにくい知を組織で共有する力」として理論化したもので、いまや経営学の世界標準です。生成AIが登場するはるか前に生まれた考え方が、RAGの時代に再び脚光を浴びているのは興味深いところでしょう。

ナレッジマネジメントに関するよくある質問

社内wikiやファイル共有と何が違うのですか?
ファイルを置く場所を用意するのは手段の一つにすぎません。ナレッジマネジメントは、知識を集めて整理し、必要なときに使われ、組織の力に変わるところまでを目指す取り組みです。置くだけで使われなければ意味がない点が、単なる保管との違いです。
ベテランの退職で知識が失われるのを防げますか?
備えになります。熟練者のノウハウを文書や事例として残し、組織で共有しておけば、人が去っても知識が残ります。近年は生成AIで聞き取りや要約がしやすくなり、暗黙知を形にする負担が下がってきました。
生成AIを導入すれば、ナレッジマネジメントになりますか?
ツールを入れるだけでは完成しません。どの知識を集め、どう整理し、誰が使い続けるかの設計があって機能します。生成AIは強力な道具ですが、知識を残し活かす仕組みづくりとセットで初めて効果が出ます。

あわせて読みたい記事