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AIエージェント導入前チェックリストで見るAISI第1.20版の観測と制御

AIエージェントに任せる範囲を先に絞るだけで、導入判断はぐっとしやすくなります。
ログ、承認、停止を7項目で確かめ、設定済みではなく試験済みで判定しませんか?

AIエージェント導入前チェックリストで見るAISI第1.20版の観測と制御

AIエージェントの導入前には、「良い回答が出るか」だけでなく、何を見られ、どこで止められるかを決めておく必要があります。AISIが2026年7月7日に公表した「AIセーフティに関する評価観点ガイド(第1.20版)」は、その確認を「観測と制御」という言葉で整理しました。

ここでは公式ガイドの内容を、導入判定表にそのまま転記できる7項目に再編します。設定表を眺めて終わらせず、誤指示や外部ツールの誤用が起きたときに、実際に介入・停止できるかまで試すのが要点です。

要点導入前の合格は「設定済み」ではなく「試験済み」

権限、ログ、承認フローが用意されていても、意図した通りに作動するとは限りません。テスト環境で停止ボタン、承認点、履歴の残り方まで確かめます。

AISI第1.20版が変えた安全評価の視点

AISIは、AIエージェントシステムの普及を踏まえて第1.20版へ改訂し、既存の10評価観点を見直した上で、特有の評価観点として「自律的な挙動」と「外部環境との相互作用」を追加しました。読み取り専用のチャットAIと違い、ファイル更新やメール送信、外部サービス操作まで行うAIでは、回答文の品質だけを見ても安全性を判断できません。

出典: AISI「AIセーフティに関する評価観点ガイド(第1.20版)の公開」

改訂内容の全体像が必要な場合は、先にAISI第1.20版で追加された3つのリスクを把握すると、本チェックリストの意図をつかみやすくなります。本記事ではその先へ進み、誰が、何を、どの証跡で合格とするかを実務に落とします。

「観測と制御」は何を見るか

観測は、AIが何を読み、どのツールを呼び出し、どんな結果を返したかを追える状態です。一方の制御は、目標から外れたり異常な操作を始めたりしたときに、権限を制限し、承認を要求し、処理を止める状態を指します。

観測で分かること

入出力と実行結果
内部・外部ツール履歴
目標逸脱とリソース使用

制御でできること

最小権限に絞る
高リスク操作を承認待ちにする
異常時に介入・停止する

注意ログがあるだけでは止められない

履歴が残るのは観測の一部です。外部送信や削除が実行された後に原因を追えても、影響を元に戻せるとは限らないため、ログと承認・停止を別の項目で評価します。

AIエージェント導入前チェックリスト7項目

以下の7項目は、AISIが示した評価項目例を、AI利用企業が導入判定に使える形へ再編したものです。法令チェック表や安全認証ではないため、自社の業務、データ、接続先、影響範囲に合わせて合格条件を追記してください。

  1. 対象業務と達成目標を1つに絞る
    「バックオフィスを自動化」では広すぎます。例えば「公開済み資料だけを読み、会議用の要点を提案する」のように、対象と終了条件を限定します。
  2. 読み取り・作成・送信・削除・権限変更を分ける
    操作ごとに許可範囲を分け、初期値は読み取りから始めます。AIエージェントの権限を業務別に分ける考え方も、この列の設計に使えます。
  3. 接続するファイル、データベース、SaaS、ツールを一覧化する
    「必要なデータだけ」で済ませず、接続名、対象フォルダ、操作範囲、管理者を記録します。
  4. 入出力、ツール呼び出し、実行者、日時、結果を記録する
    回答文だけではなく、どの外部ツールを使い、対象がどう変わったかを追える状態にします。利用ログを月次で見る安全指標と組み合わせると、導入後の点検につなげられます。
  5. 高リスク操作の承認点と停止条件を決める
    外部送信、削除、権限変更、高負荷処理など、失敗したときに戻しにくい操作を別表にします。承認者が不在の場合は、自動継続ではなく中断を初期値にします。
  6. テスト環境で誤指示、目標逸脱、ツール誤用、記憶汚染を試す
    正常系の成功確認だけでなく、禁止した操作を依頼したり、データを取得できない状態を作ったりして、安全側に止まるかを確かめます。
  7. 本番開始後の再評価日、責任者、連絡経路を決める
    モデル更新、接続先追加、権限変更、インシデントの発生を再評価の起点にします。

判定表に残す列

記入内容合格の目安
確認項目権限、ログ、停止など対象が明確
対象業務・接続先どの業務とデータか名称と範囲が特定済み
担当者設定、試験、最終判定役割が分離済み
証跡設定画面、ログ、試験結果後から再現可能
最終確認・次回日実施日と再評価予定期限とトリガーが明確

AIエージェントの自律的な挙動をどう観測するか

AIエージェントは、目標に向けて外部情報や記憶を参照し、手順と行動を選びます。そのため、最終結果が合っているかだけでなく、目標から外れていないか、許可していない情報やツールに触れていないかを実行中に見られるようにします。

目標逸脱

当初の目標と利用者の意図から外れていないか

記憶への書き込み

誰が更新し、後続の判断に何が残ったか

実行履歴

内部・外部コンポーネントをどの順で使ったか

リソース

時間や使用量が上限を超えそうなときに中断できるか

出典: AISI「AIセーフティに関する評価観点ガイド」

ここで残すべきなのは、運用者が後から判断できる証跡です。「成功」「失敗」だけでなく、使った接続先、状態変更の前後、承認者、停止理由を並べると、原因の切り分けと再発防止がしやすくなります。

AIエージェントの外部環境との相互作用をどう制御するか

外部環境には、ファイル、データベース、メール、SaaS、他のAIエージェント、物理装置が含まれます。AISIは、利用目的に不要な情報へのアクセスを防ぐこと、必要なツールだけに権限を与えること、外部コンポーネントの実行履歴を記録すること、異常時に人が介入・停止できることを評価項目例として示しています。

承認の重さは失敗時の戻しにくさで変わり、要約案の作成なら後から直せます。一方、顧客への送信、本番データの削除、アカウント権限の変更は影響が残るため、実行直前に人の承認を置き、不在時は止める運用を基本とし、入力・外部公開・自動実行の3分類も判定表のたたき台に使えます。

承認物理装置は別枠で扱う

AIエージェントが機械や設備を操作する場合、情報の誤処理だけでなく、人の身体や周辺物への影響があります。装置側の安全措置をAIから解除できないようにし、情報システムの合格と分けて判定します。

AIエージェント導入前にVerificationとValidationを分ける

AISIは技術的評価を、設計・仕様が要件を満たすかを見るVerification(検証)と、実環境で意図した通りに動くかを見るValidation(妥当性確認)の2つに整理しています。言い換えると、前者は「設計図の確認」、後者は「本番に近いリハーサル」です。

設計・権限・仕様を見る
誤指示と異常停止を試す
証跡と残余リスクを比べる
設定があることと、実際に機能することを別々に合格判定する

Verificationでは、アーキテクチャ設計書、権限設定、ログ仕様、承認フローを見ます。一方、Validationではテストデータの投入、プロンプトインジェクションを想定した試験、高リスク操作時の介入・停止試験を行い、両方の証跡がそろった状態を導入判定の材料とします。

AIエージェント導入後も繰り返し評価する

AIエージェントのリスクは、本番開始時の設定だけで固定されません。モデル更新、プロンプト変更、接続先追加、権限の拡大、組織変更によって、同じ名称のシステムでも実際の挙動と影響範囲は変わります。

再評価は「毎月第1営業日」のような定期日に加え、権限変更、新規連携、モデル更新、インシデント発生をトリガーにします。生成AIリスクを月次で経営会議へ上げる方法と合わせれば、導入判定表を運用後の台帳として継続利用できます。

再評価日付と変更の両方を起点にする

定期点検だけでは、直前の変更から次の点検日まで空白ができます。影響範囲が変わった日に再評価チケットを起票する仕組みも用意します。

導入判定表を経営会議で使う

経営会議では、「AIを使うか、使わないか」の二択にしません。対象業務、操作権限、承認点、停止試験、残るリスクを並べ、読み取りは合格、外部送信は保留のように、権限別に結論を出します。

導入判定表を残す目的は、承認者を増やすことではなく、判定材料をそろえることです。技術担当者は設定と試験結果を、業務責任者は許容できる影響範囲を、経営層は残余リスクと再評価条件を判断すると、責任の所在が曖昧になりにくくなります。

出典: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」

最初の一歩1業務・1接続先・1回の停止試験から始める

小さな会社が全66ページをいきなり制度化する必要はありません。影響を限定した1業務で、読み取りだけを許可し、異常時の停止と証跡の残り方を確かめるところから始められます。

AIエージェント導入前チェックリストFAQ

QAISI第1.20版はいつ公表されましたか?

A2026年7月7日です。AISI公式サイトで概要版と本編が公開されています。

QAIエージェント導入前に何から確認すればよいですか?

A対象業務を1つに絞り、読み取り・作成・送信・削除・権限変更を分けて、最小権限から始めます。

Qログが残れば観測と制御を満たせますか?

Aいいえ。ログは観測の一部であり、最小権限、高リスク操作の承認、異常時の介入・停止を別に試す必要があります。

QVerificationとValidationはどちらか一方でよいですか?

Aいいえ。Verificationで設計・仕様を確認し、Validationで実環境に近い動作試験と停止試験を行います。

Q小さな会社でもAISIの考え方を使えますか?

Aはい。全項目を一度に制度化せず、1業務の最小権限、ログ、承認、停止試験から始めます。

QAIエージェントはどのタイミングで再評価しますか?

A定期日に加え、モデル更新、接続先追加、権限変更、インシデント発生の直後に再評価します。

AIエージェント導入前チェックリストの中心は、細かい規程を増やすことではなく、見えること、止められること、変更後にもう一度試すことです。1業務の読み取りから始め、設定と動作の両方を証跡で確かめてから、承認付きの書き込みへ進めてください。

GLOSSARY

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