記号創発ロボティクスとは

記号創発ロボティクスとは、ロボットやAIが、自分の体で世界に触れた経験から、言葉や記号(意味)を自分で生み出していく過程を解き明かそうとする研究分野のことです。人があらかじめ意味を教え込むのではなく、見る・聞く・触るといった経験の積み重ねの中から、概念や言葉が「ひとりでに立ち上がってくる」様子を、ロボットを実際に作りながら確かめていきます。日本の谷口忠大らが提唱しました。

英語表記:symbol emergence in robotics

記号接地問題とは、向きが逆の問い

よく似た用語に記号接地問題があり、関係は深いものの中身は別物なので整理しておきましょう。記号接地問題は「すでにある言葉を、どうやって現実の物事と結びつけるか」を問います。これに対して記号創発ロボティクスは、「そもそも言葉や記号は、経験の中からどうやって生まれてくるのか」という、いわば向きが逆の問いに挑むのです。大量の文章を読み込んで学ぶ今の生成AIとも対照的で、こちらは身体を通した経験から意味を育てる道を探ります。AIが世界を本当に「分かる」とはどういうことかに迫る、根っこの研究といえるでしょう。

Topic提唱者は、あの「ビブリオバトル」の生みの親

記号創発ロボティクスを提唱した谷口忠大さんには、研究とは別のもう一つの顔があります。図書館や学校で広まった本の紹介ゲーム「ビブリオバトル」の考案者なのです。参加者が好きな本を順番に紹介し合い、いちばん読みたくなった一冊を投票で選ぶこの遊びは、研究員時代の2007年に生まれました。「人が言葉で本の魅力を伝え合い、興味が広がっていく」場づくりは、記号や意味が人々の間で立ち上がる様子そのもの。研究テーマと地続きなのが面白いところですね。

記号創発ロボティクスに関するよくある質問

記号創発ロボティクスは、記号接地問題と同じものですか?
関係は深いですが別物です。記号接地問題は「ことばと現実をどう結びつけるか」を問い、記号創発ロボティクスは「記号そのものが経験からどう生まれてくるか」に注目します。問いの向きが異なります。
記号創発ロボティクスでは、ロボットはどうやって言葉を覚えるのですか?
物を見て触りながら似たもの同士をグループにまとめ、人の発する音声から意味のまとまりを切り出す、といった作業をくり返します。正解を一つずつ教えずに、経験の中から概念や言葉を立ち上げていくのが特徴です。

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