サイバネティックスとは
サイバネティックスとは、生物にも機械にも共通する「制御」と「フィードバック」の仕組みを、分野の壁を越えて研究する学問です。数学者ノーバート・ウィーナーが1948年に提唱しました。生き物が体温を一定に保ち、機械が目標値に向けて自動で調整する。そうした「結果を見て次の行動を直す」働きを、生物と機械にまたがる共通の原理としてとらえようとした点に特徴があります。
結果を見て、次を直す
サイバネティックスの心臓部にあるのがフィードバックという考え方です。身近な例はエアコンの温度調整。設定より室温が高ければ冷やし、下がりすぎれば止める、というように結果(室温)を測っては次の動き(冷やす・止める)に反映させる輪っかが回っています。生き物が血糖値や体のバランスを保つのも、同じ「ずれを感じて補正する」仕組み。ウィーナーは、この制御とコミュニケーションの原理が動物にも機械にも等しく当てはまると見抜いたのです。
AI・ロボットの「前史」として
サイバネティックスは、人工知能や制御理論、ロボット工学、初期のニューラルネットワーク研究に大きな影響を与えました。人工知能という分野が一つの旗印として立ち上がるのは1956年のダートマス会議。その後はAI研究へ資金や注目が移り、サイバネティックスという看板自体は表舞台から退いていきます。とはいえ「機械が結果を見て自分の振る舞いを調整する」という発想は、今のAIやロボットの根っこに脈々と受け継がれていると言ってよいでしょう。今の生成AIブームよりはるか前、コンピュータの黎明期に芽生えた考え方なのです。
Topic「サイバー」の語源は、船の舵取りだった
サイバネティックス(cybernetics)の語源は、ギリシャ語で船の舵取り(操舵手)を意味するkybernetesです。荒波や風に合わせて舵を細かく直し、船を目的地へ導く姿は、まさにフィードバックそのものですね。さらにこの言葉は、現代の「サイバー」のルーツでもあります。たとえばサイボーグ(cyborg)はcybernetic(サイバネティックの)とorganism(生物)を縮めた造語。私たちが何気なく使う「サイバー〇〇」の多くは、もとをたどればこの操舵手にたどり着くのです。
サイバネティックスに関するよくある質問
- サイバネティックスと人工知能(AI)は何が違いますか?
- AIは知的な処理を機械にさせることを目指す分野で、サイバネティックスは生物と機械に共通する制御とフィードバックの原理を探る、より広い枠組みです。AIが独立した分野になる前の、いわば前史にあたります。
- 「サイバネティックス」は今も使われている言葉ですか?
- 学問の看板としては表に出る機会が減りましたが、考え方は健在です。結果を見て動きを補正する制御の発想は、ロボットや自動運転、AIの制御など、今の技術のあちこちに受け継がれています。
- サイバネティックスを知ると、ビジネスでどう役立ちますか?
- 結果を測って次の打ち手を直すという改善の型を、機械だけでなく組織運営にも当てはめて考えられます。AIや自動化を導入するとき、どこで結果を測り、どう調整の輪を回すかという視点が得られます。