ダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシングとは、需要や在庫、競合の価格、時間帯といったその時々の状況に合わせて、商品やサービスの値段を自動でこまめに変える売り方のことです。「動的価格設定」「変動料金制」とも呼ばれます。同じ商品でも、混んでいる時間帯は高く、空いている時間帯は安く、というように価格が動くのが特徴でしょう。航空券やホテルの料金が日によって変わるのは、その代表的な例です。

ダイナミックプライシングの仕組み

値段の決め方には、大きく2つのやり方があります。1つはルールベース型で、「気温が30度を超えたら○円上げる」のように、人があらかじめ決めたルールに沿って価格を動かす方法です。もう1つがAI型(需要予測型)で、過去の売れ行きや競合の価格、曜日・天候・イベントといったデータを機械学習で読み解き、「いまこの条件なら、いくらが一番売れて利益も出るか」を予測して値段を自動で決めるやり方になります。

近年は、データが集まるほど精度が上がっていくAI型の活用が広がってきました。需要を読み解く部分を支えているのは、商品が将来どれくらい売れるかを見積もる需要予測の技術です。

「値上げの仕組み」という誤解

ダイナミックプライシングというと、「需要が高いときに値上げするための仕組み」だと受け取られがちです。ただ、これは半分しか言い当てていません。実際には、需要が落ちれば値下げもする双方向の仕組みで、空席や売れ残りを埋めるために安くするのも立派なダイナミックプライシングです。混雑時に料金が跳ね上がるライドシェアの「サージプライシング」は、その値上げ側の一面を切り取った呼び方にすぎません。

もう1つ混同しやすいのが、ハイパーパーソナライゼーションのような「人ごとに違う値段を出す個別価格」との違いです。ダイナミックプライシングは市場全体の状況で価格が動くもので、同じ瞬間なら基本的に誰が見ても同じ値段になります。買い手の属性によって一人ひとり価格を変える個別価格とは、考え方が分かれます。

どんな業界で使われているか

もともとは1980年代の航空業界で、空席を埋めながら収益を最大にする手法として広まりました。いまではホテル、ライドシェア、ネット通販、スポーツやイベントのチケット、テーマパークなど、幅広い分野に広がっています。日本でも、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが2019年に入場券へ本格導入し、話題になりました。

経営から見ると、需要に応じて価格を動かせることは収益の取りこぼしを減らす武器になります。一方で、急な値上げは顧客の不信を招きやすいという難しさも抱えています。「なぜ高くなったのか」が伝わらないと、かえって離れていく。便利さと納得感のバランスが、運用の勘どころといえるでしょう。

Topic「暑い日ほど高くなる自販機」が炎上した話

1999年、コカ・コーラが気温に連動して自動で値上げする自販機をテストしていたことが報じられました。当時の会長は「暑い決勝戦では冷たい飲み物が欲しくなる。だから高くするのは公正で、機械がそれを自動化するだけだ」と語ったとされます。ところが消費者の猛反発を浴び、この自販機が市場に出ることはありませんでした。需要に応じて値段を動かす発想そのものは合理的でも、「足元を見られた」と感じさせた瞬間に支持を失う。ダイナミックプライシングの難しさを、20年以上前に先取りしたエピソードです。

ダイナミックプライシングに関するよくある質問

ダイナミックプライシングを使うと、必ず値段が高くなるのですか?
いいえ。需要が高いときは値上げしますが、需要が落ちれば値下げもする双方向の仕組みです。空席や売れ残りを埋めるために安くするのも、ダイナミックプライシングの一部です。
ダイナミックプライシングとサージプライシングは違うものですか?
サージプライシングは、需要が急増したときに一時的に値上げする側面だけを指す呼び方です。ダイナミックプライシングは値下げも含むより広い概念で、サージプライシングはその一面にあたります。
人によって表示される値段が変わるのですか?
原則として変わりません。ダイナミックプライシングは在庫や競合など市場全体の状況で価格が動くため、同じ瞬間なら誰が見ても基本は同じ値段です。個人の属性で一人ずつ価格を変える個別価格とは別の考え方です。

あわせて読みたい記事