適合性評価とは

適合性評価とは、高リスクに分類されるAIシステムをEU市場へ出す前に、法律の要件を満たしているかを確認する手続きです。EUで売る・使わせる前の”規制適合の検品”にあたります。EU AI法はAIを危険度で4段階に分けますが、医療や採用、与信、重要インフラのように影響の大きい用途は「高リスクAI」とされ、市場に出す前にこの評価が欠かせません。

評価の進め方は2つの経路がある

大きく2つの道があります。1つは提供者が自社の責任で確認する「自己評価」で、与信・教育・雇用・重要インフラなど多くの高リスク用途はこちらだけで済み、外部の認証機関は不要です。もう1つは第三者の認証機関(notified body)が関わる経路で、顔認証などの生体認証系で、共通の技術規格をきちんと使っていない場合に必要になります。

評価をクリアすると、提供者は「EU適合宣言」を作り、製品にCEマーキングを付けてEU市場に出せます。実施するのは提供者で、市場に出す”前”が原則です。学習のやり直しなどで中身が大きく変わったときは、改めて評価し直すことになります。

「性能テスト」や「政府の審査」とは違う

名前から精度や性能を測る試験を思い浮かべがちですが、それとは違います。適合性評価が確認するのは、リスク管理やデータの扱い、人による監督、堅牢性といった”法令上の要件”を満たしているかであって、AIの賢さそのものを採点するものではありません。さらに「政府がAIを審査して許可を出す」というイメージも実態とずれており、多くの用途は提供者の自己評価で足ります

日本企業が押さえておきたい点

この義務が直接かかるのは、AIを”提供する側”です。EU市場に高リスクAIを出すなら、市場投入前の適合性評価とCEマーキングが必要になります。負担の中心は外部審査の費用よりも、社内での文書化やリスク管理体制の整備です。なお高リスクAIへの適用時期は、当初2026年8月2日と2027年8月2日からの段階適用が予定されていました。2026年5月にはこれを後ろ倒しする方向で政治的合意がなされたものの、2026年6月の時点では正式な発効前で、元の期限が法的にはなお有効です。適用時期が動いているため、準備の前倒しが勧められています。

Topicおもちゃや家電のCEマークと同じ仕組みに乗っている

適合性評価やCEマーキングは、AIのためにゼロから作られた新制度ではありません。EUが玩具・機械・医療機器などで長年使ってきた製品安全の枠組み(新立法枠組み=NLF)の”AI版”として設計されています。家電やおもちゃに付いているあのCEマークと、同じ仕組みの上にAIが1つの製品カテゴリとして乗った形なのです。既存の製品規制と二重負担にならないよう整合させる狙いがあり、EU向け製品でCE対応の経験がある企業なら、その延長線上で理解できるのが利点です。

適合性評価に関するよくある質問

適合性評価は、AIの精度や性能を測るテストですか?
いいえ。性能の良し悪しではなく、リスク管理やデータの扱い、人による監督など『法律の要件』を満たしているかを確認する規制手続きです。
適合性評価は政府がAIを審査するのですか?
多くの高リスク用途では提供者自身による自己評価で足ります。第三者の認証機関が関わるのは、顔認証など生体認証系の限られた場合です。
適合性評価の義務はいつから始まりますか?
高リスクAIへの適用は当初2026年8月2日と2027年8月2日が予定されていました。2026年5月に延期の方向で合意されましたが、2026年6月時点では正式な発効前です。