NYC Local Law 144とは

NYC Local Law 144とは、ニューヨーク市で、採用や昇進にAIツールを使う企業に「偏りの検査」を義務づけた条例のことです。AIによる選考が特定の性別や人種を不利に扱っていないかを、毎年チェックさせます。世界でも早い時期に施行された、雇用とAIをめぐるルールの一つです。応募者を選別するAIツールはChatGPTが広く知られる前から企業で使われており、市は早くから規制に動きました。条例の成立は2021年、市当局による執行は2023年7月5日から始まっています。

正式名称:ニューヨーク市地方法第144号(2021年)

英語表記:New York City Local Law 144 of 2021

企業に課される2つの義務

対象になるのは、採用や昇進の判断にAEDT(自動雇用意思決定ツール)を使う、市内の雇用主や人材会社です。求められる義務は、大きく2つ。1つは、使う前の1年以内に、独立した第三者による「バイアス監査(偏りの検査)」を受け、その結果をウェブで公開すること。もう1つは、選考に使う少なくとも10営業日前に、応募者や従業員へ前もって知らせることです。AIに任せきりにせず、偏りを点検し本人にも伝える。その姿勢を制度として求めた点に特徴があります。

守らせる仕組みと罰則

執行を担うのは、市の消費者・労働者保護局(DCWP)という部署です。違反した場合は、1日あたり約500ドルから約1,500ドル(2023年時点)の民事罰が科されえます。検査と通知を怠れば、日数に応じて負担が積み上がる仕組みになっているわけです。

日本企業にも関わる理由

これは対岸の話とは限りません。ニューヨーク市で採用活動を行うなら、市外や国外の企業でも対象になりうるからです。採用にAIを取り入れる動きが世界で広がるなか、この条例は「AIの選考は偏っていないか」を制度として問うた先駆けとして、各国のルール作りの参照点になっています。自社の採用にAIを使うなら、偏りの検証は早晩避けて通れないテーマでしょう。

Topic野心的な条例なのに、見つかった違反は「ほぼゼロ」だった

ニューヨーク州の監査が2025年に明らかにしたところでは、市当局が調べた32社のうち、違反として特定できたのはわずか1件。寄せられた苦情も2件にとどまり、苦情を受け付ける仕組みそのものが十分に機能していないと指摘されました。世界の先駆けとされる条例でも、定めることと実際に守らせることの間には大きな隔たりがある。その現実を映す結果といえます。

NYC Local Law 144に関するよくある質問

NYC Local Law 144はアメリカ全土の法律ですか?
いいえ。ニューヨーク市の条例です。ただし採用AIに偏りがないかを問う先駆けとして、ほかの州や国のルール作りに影響を与えました。
どんな場面で関係しますか?
応募者をスコア付けしたり順位づけしたりするAIツールを、採用や昇進の判断に使う場面です。ニューヨーク市内で採用活動を行う企業が主に関わります。
「144」とは何の番号ですか?
ニューヨーク市議会で2021年に成立した地方法(Local Law)の通し番号です。これが条文の通称として定着しました。

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