Copycat(コピーキャット)とは

Copycatとは、「abcがabdに変わったとき、ijkを同じように変えるとどうなるか」といった文字の並びの類推の問題を、人に近いやり方で解こうとしたコンピュータのプログラムです。ダグラス・ホフスタッター氏とメラニー・ミッチェル氏が開発し、1995年の本の1章で全体像をまとめました。2つの場面の対応を探す作業と、それぞれの場面の見え方を組み立てる作業を、切り離さずに同時に進めるのが特徴です。

英語表記:Copycat(the Copycat project)

どんな問題を解くの?

1995年の章が最初に挙げる問題は、「abcがabdに変わったとき、ijkを同じように変えると?」です。ほとんどの人は「ijl」と答えます。「右端の文字を、アルファベットの次の文字に替えた」と読むのが自然だからです。「右端をdに替えた」と読んでijdと答えたり、まるごとabdと答えたりする、理屈の上では成り立つ答えもありますが、そう答える人はまれで、言われても、ほとんどの人には説得力が弱く感じられる、と章は書いています。

では、こう変えるとどうでしょう。「aabcがaabdに変わったとき、ijkkは?」。同じ規則をそのまま当てはめるとijklですが、多くの人は、2つ並んだkをひとかたまりと見て、ijllと答えます。このとき、「文字」という考えが、問題の圧力を受けて「文字のかたまり」へ横滑りしているわけです。章はこれを「スリッページ(滑り)」と呼び、人の考えの柔らかさを表す例にしました。並んだ2つの文字の両方を意識した人なら、ijkkを逆向きに読んで、左端を前の文字に替えたhjkkにたどり着きやすい、とも章は書いています。

どうやって答えを見つける?

ミッチェル氏の2021年の論文によると、Copycatは4つの部品でできています。分野の知識をつないだ概念の網、いま考えている場面の見え方を書き込む作業場、その作業場で小さな組み立てと取り壊しを確率的に繰り返す、たくさんの小さな担い手、そして「温度」です。作業場は、ブラックボードシステムをヒントにしています。

温度は、いま組み立てている解釈がどれくらいまとまっているかを表す目盛りで、計算の途中で上がったり下がったりします。まとまっていないうちは温度が高く、担い手の動きはでたらめに近い状態。まとまってくると温度が下がり、動きは決まった方向へ絞られていきます。章によると、Copycatの作りは記号AIの方式でもコネクショニズムの方式でもなく、両者を混ぜるつもりで作ったものでもない、その中間に位置するものです。

いまの生成AIは、この問題を解ける?

2023年、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のテイラー・ウェッブ氏らは、ホフスタッター氏とミッチェル氏の問題をもとにした文字列の類推などで、GPT-3を人と比べました。例を見せずに(ゼロショットで)解かせても、多くの条件で人に並ぶか上回った、という報告です(論文誌Nature Human Behaviour)。

これに対し2024年、英ブリストル大学のマーサ・ルイス氏とミッチェル氏は、アルファベットの順番を入れ替えたり、文字の代わりに記号を使ったりした問題を作って試しました。人の成績は高いままでしたが、GPT-3・GPT-3.5・GPT-4はいずれも大きく下がり、ふつうのアルファベットでも平均では人に及ばなかった、という結果です。2人は、学習データに似た並びがあったから解けていた可能性があり、人のような柔軟な抽象化にはまだ届いていない、と結論づけました。ただし、いくつか例を見せてから解かせる条件は試しておらず、新しいモデルはそこで力を発揮するかもしれない、とも書いています。

ウェッブ氏らは同じ2024年に反論しました。入れ替えたアルファベットの問題は、文字が何番目かを正確に数えないと解けず、言語モデルは数えることが苦手だと知られている、という指摘です。プログラムを書いて実行できるGPT-4に解かせると、人とほぼ同じ水準で解けたと報告しました。そのうえで、数えるためにコードを書くのは人のような解き方ではない、とも認めています。Copycatの問題は、「AIは本当に類推しているのか」を確かめる物差しとして使われていて、2024年の時点では、答えが割れたままです。

Topic「Copycat(まねっこ)」という名前は、類推そのものを言い表した冗談

ミッチェル氏は2021年の論文で、この名前は「類推をすることは、まねっこ(copycat)になるのに似ている」という考えへのユーモアだと説明しています。ひとつの場面を理解して、別の場面で「同じことをする」のが類推だ、というわけです。1995年の章も、最初の問題が求めているのは要するに「まねっこになれ」、つまり「私と同じことをせよ」だと書き、続けて、その「同じ」こそが、つかみどころのない言葉だと念を押しています。

Copycatに関するよくある質問

Copycatは、自分で学習して賢くなるのですか?
いいえ。ミッチェル氏は2021年の論文で、Copycatの概念の網は人の手で作ったもので、学習して得たものではない、と書いています。示したのは、すでにある考えを新しい場面へ柔軟に合わせるやり方で、新しい考えを覚えるやり方ではありません。比べる2つの場面は最初から与えられていて、記憶から探してくるわけではないこと、部品の組み立てや細かな設定が複雑で場当たり的だったことも、限界として挙げています。
なぜ、文字の並びという小さな題材なのですか?
ミッチェル氏によると、文字の並びの問題は、知能検査で使われるレーヴンの図形の問題と同じように、現実の抽象化と類推の核心を取り出すために作った、理想化した題材です。1つの文字列が、物(文字や文字のかたまり)、物どうしの関係、出来事(1つ目から2つ目への変化)を含む小さな「場面」になっています。Copycatは文字列の類推そのものを再現するためではなく、分野を問わない類推の仕組みを、この題材で示すためのものだった、と念を押しています。

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